Solution Consulting事業
Discrete Manufacturing Business Group
「変えるべき」をデータで示す製造業変革

自動車、総合電機、産業機械、電子部品・半導体――日本の組立製造業では、国境をまたいで広がるサプライチェーンをいかに再構築するかが重要な経営課題となっている。生産拠点の再配置や地政学リスク、グローバル市場での競争環境が変化するなか、経営の判断を支えるデータ基盤をどう整え、経営から現場までをどうつなぐか。その変革を、システムの企画・設計から実装まで一貫して支えるのが、Industry Solution Strategy UnitのDiscrete Manufacturing Business Groupだ。同グループを率いる木村成利 Business Group Leaderに、「変えるべきだ」をデータで証明し、経営から現場までをつなぐ変革への道筋を聞いた。

Profile

Principal
Industry Solution Strategy Unit
Discrete Manufacturing Business Group Leader

木村 成利

日系SIerを経て2005年アビームコンサルティングに入社。会計・経営管理領域における業務改革を中心に、全社サプライチェーン改革、全社業務標準化など大規模な業務改革、IT導入、およびグローバルロールアウトなどを多数リードし、現職に至る。

世界の「つくる」と「売る」を、どのように再構築するか

私たちが向き合っているのは、自動車・モビリティー、総合電機、産業機械、電子部品・半導体といったディスクリート製造業(加工組立製造業)の領域です。アビームコンサルティング(以下、アビーム)のなかで、ERPをはじめとする基幹システムから製造・設計領域まで、ものづくりを支える仕組みの変革を担っています。

この業界が直面している重要な経営課題の一つが、複雑化するグローバルサプライチェーンをいかに再構築し、競争優位を築き直すかという点です。

組立製造業の多くは、日本でつくって日本で売るという形ではありません。つくる場所も売る場所も世界に広がり、為替や物流費まで含めて、どこで何をつくるのかを判断しています。しかも、その最適な形は製品によって違います。

例えば一般的に空調機器は、国や地域によって気候や住宅の構造、求められる機能が異なります。そのため、主要な部品は共通化してコストを抑えつつ、それぞれの市場ニーズに合わせた製品を販売地域の近くで組み立てる方法が考えられます。一方、自動車は生産設備への大規模な投資や高度な品質管理が必要となるため、車種や販売規模によっては、特定の拠点に生産を集約した方が効率的な場合があります。その場合は、集中的に生産した車両を販売地域へ輸送する方法も選択肢となります。こうした方針を本社が全体を俯瞰して決めるのか、各地域に委ねるのか。さらに地政学リスクが絶えず前提を書き換えるため、継続的に見直す必要があります。複数の供給元や輸送ルートを切り替えられる機動力まで織り込んで生産と販売の配置を再設計すること自体が、クライアントごとの経営課題になります。

グローバルに事業を展開する企業の中には、世界の各拠点で共通の業務プロセスとシステムを運用し、経営層が全体を俯瞰して迅速に意思決定できる体制を整えている企業もあります。日本の製造業では、各工場が高い現場力を磨くことで競争力を築いてきました。グローバルに事業が広がるなか、その強みを生かしながら、拠点ごとに蓄積された仕組みやデータをどうつなぐかが重要になっています。

経営と現場をつなぐ「翻訳者」

ある企業の役員から、「自社のやり方に間違いを感じるが、それを証明できない」と相談されたことがあります。この言葉は、私にとって非常に印象に残っています。経営陣は資本市場に対し、ROICなどの資本効率改善を約束しています。数字に違和感があり原因究明を望んでも証明できない背景の一つに、拠点や業務ごとにデータが分かれ、横断的に分析しにくい状況があります。

全体を一元化する難しさはデータの状態にも現れます。拠点ごとにシステムや業務が異なるため、ERPを導入していても、工場の製造実行システムや設計のPLM(Product Lifecycle Management)とデータが連携しているとは限りません。ものづくりの起点である部品表がデジタル化されていなかったり、工場の出来高実績が基幹システムに反映されていなかったりする状態では、どの製品をどの拠点でつくればどれだけの利益が出るのかを同じものさしで比較できません。

私たちが本当に提供すべき価値は、単なるシステムの構築ではなく、分断された情報を一元化し、経営陣が確信を持って次の一手を決断できる土台を築き上げることです。

変革の第一歩は、何を評価基準に据えるかというKPIの定義から始まります。例えばROICなどの経営指標を、製造現場の日々のオペレーションまで分解していく。経営が見ている数字と現場が動かしている数字を一本につなぐことで、初めて同じファクトをもとに議論できるようになります。

そこでコンサルタントが果たすべきは「翻訳者」としての役割です。経営の意図を現場に届く言葉へ置き換え、現場の実態を経営判断に必要な情報として整理する。この双方向のコミュニケーションをつなぐことで、変革が組織全体へ深く浸透していきます。

例えば、私が現在注力している物流改革でも、制度やルールの見直しから、データの可視化、基幹システムとの連携までを一連の変革として捉えています。調達、生産、在庫、輸送など、部門ごとに分かれている情報をつなぎ、どこに課題があり、何を変えるべきなのかをデータで明らかにする。さらに、その結果を経営が判断できる指標に整理すると共に、現場が具体的な行動に移せる形へと落とし込んでいきます。こうして「変えるべきだ」という感覚を、具体的な判断材料へ変え、経営と現場が共通の認識を持てるようにすることも、「翻訳者」としての重要な役割です。

サプライチェーンの再構築は、そのまま経営管理の高度化へと直結しています。一見、現場の課題に見えるものが、実は経営の根幹に関わっている。その構造をクライアントと共に捉え、変革の全体像を描くところまで向き合っています。

経営から工場、設計まで、データをつなぎきる実行力

私たちがこうした基盤を築き上げてきた背景には、これまでに培ってきた二つの大きな強みがあります。

一つは、変革を具現化する「実行力」です。私たちはERP領域を中心に経験を積み重ねながら、製造業の本質的な変革を支えるため、工場や設計の領域へも支援範囲を広げてきました。実際のプロジェクトを通じて、製造実行システム(MES)やPLMといった専門領域の知見を、蓄積してきました。

その最初の例が、ある産業機械メーカーでの挑戦です。そこでは販売・生産計画からERP、さらには工場の製造実行システムに至るまでを一つに統合し、部品表のデータをPLMまでシームレスに接続しました。さらに、その先の将来構想として描いているのが、出荷後の製品から得られる稼働状況やサービスの記録を設計・開発へフィードバックし、次世代の製品力へとつなげる仕組みです。データが組織の壁を越えて循環し続ける状態を、私たちは見据えています。

もう一つの柱は、日本発の企業が世界へ挑む歩みを支える中で培ってきた、グローバル変革の経験と知見です。一例として、ある電機メーカーでは、国内外にまたがる数十拠点を対象に、業務プロセスを端から端まで統合しました。欧州での受注が本社を経由して速やかに生産現場へとつながり、出荷までが一連で進む。この高度な標準化によって、より効率的にグローバルを動かす仕組みを実現しています。世界各地のどこに在庫があり、どこで注文が入っているのかを把握し、変動への即応体制を築く。日本本社からグローバル全体を可視化し、各拠点と連携しながら迅速に意思決定できる仕組みをつくる。この領域で、私たちは確かな実績を積み重ねてきました。

この二つを支えているのが、組織体制です。先ほどの物流改革がそうであるように、あるべき姿を描くBusiness Consulting事業と、それを動く仕組みにする私たちが同じ組織のなかにいるため、構想を描く段階から実装を見据え、両チームが連携できることが強みです。最適な需給配置を導き出す構想力と、経営から現場までデータを通わせる実行力。双方がそろうことで、機動力のあるサプライチェーンを、絵ではなく現実のものにできます。

システムのその先へ。新しい事業まで共につくる

今後、私たちが注力しているテーマは、AIの実装を前提としたオペレーションの抜本的な再定義、そしてその延長線上にある新規事業の共創にあります。

日本の製造業では今、製品をつくって販売する「売り切り」のビジネスから、販売後もクライアントとつながり、サービスとして価値を提供し続けるビジネスへの移行が進んでいます。しかし、これは既存の仕組みの延長で到達できるほど簡単なものではありません。製品がどこでどう使われているのかというデータが集まり、その事実を前提に全業務プロセスが組み立てられて初めて、事業変革は実現します。

私たちがクライアントと共につくり上げてきたデータの土台は、まさにこの未来を切り拓くためのものです。AIによって定型業務を効率化し、人がより高度な判断や新たな価値創出に力を振り向けられる可能性も広がっています。一方で、それだけでクライアントが目指す成果に到達できるとは限りません。だからこそ私たちは、基幹システムの最適化にとどまらず、ビジネスモデルの構想から、それを支える商流・物流の設計、それらを支えるプラットフォームや業務プロセスの実装まで一貫して支援する。システムを整えることを起点に、その先にある新たな事業をクライアントと共に形にする組織へと、私たちは進化を続けていきます。

新しいテーマに挑戦するとき、私たちが大切にしている判断軸は二つあります。「クライアントの持続的な成長につながるか」、そして「その変革に関わる人の成長につながるか」です。ここでいう「人」とは、アビームの社員だけではありません。クライアントの社員も含め、共に変革を担う一人ひとりが新たな知識や経験を得て、次の挑戦につなげられるかを大切にしています。

この二つを満たすのであれば、これまで経験のない領域であっても、既存のサービスや役割にとらわれず挑戦していく。ERPを中心に支援してきた私たちが、製造や設計へと専門性を広げてきたのも、そうした考え方があったからです。クライアントと共に挑戦し、そこで得た知見を次の変革へつなげていく。その積み重ねが、現在の私たちの支援領域の広がりにつながっています。

私たちが大切にしているのは、まず「クライアントのOutcome」を起点に考えることです。そして、幅広い領域の変革を一人で担うことはできません。サプライチェーン、経営管理、製造現場など、それぞれのスペシャリストが知見を持ち寄り、自分の知らないことは率直に認め、互いから学ぶ。チームとして最大の価値を追求できる人と、一緒に働きたいと考えています。

私たちが目指すのは、製造業の変革において、CxOが課題に直面したときに真っ先に相談したいと思っていただけるチームです。その期待に応えられる知見と実行力を積み重ね、日本のものづくりの次の成長をクライアントと共につくっていきたいと考えています。