欧州保険会社のデジタル顧客接点の最新状況
(提供:BearingPoint)

2023年7月19日

はじめに

デジタル技術の進展、顧客の要望の多様化に伴い保険業界における顧客接点の変革必要性が求められています。本インサイトでは、アビームコンサルティングのアライアンス・パートナーであるBearingPointが欧州の業界横断でデジタルでの顧客接点の在り方とその展望を調査した報告書の一部を日本語訳してご紹介します。 
なお、レポートの全文(英語)は下からダウンロードいただけます。 
本レポートでは、欧州保険会社での取り組みは、他業界に比較してデジタル対応が進んでいると評価されています。規制や国ごとの特性は考慮すべきではあるものの、日本国内の保険会社にとって、本レポートがデジタルにおける施策の参考例として、今後の保険業界の顧客接点の展望の一助になれば幸いです。 

※アビームコンサルティングはアジア、 BearingPointは欧州を基盤としており、企業のグローバル展開が加速する中、相互の知見により地域補完し、グローバル企業へのサービス拡充を目指しています。 
世界のアライアンス・パートナー 

 

BearingPointデジタルリーダー調査【保険業界編】

BearingPointは、「Digital Leaders Study 2022」という調査を実施し、デジタルマーケティング、デジタル商品体験、eコマース、e-CRMの4つの観点で、8カ国、200以上の基準でヨーロッパの大手保険会社66社のデジタル成熟度を評価した。保険業界は業界ランキングでデジタル成熟度評価3位に位置づけられる。 

■業界別評価

業界別評価 

■国別評価(保険会社)

国別評価(保険会社)

ただし、保険会社が新たなデジタルが活用された社会におけるデジタルリーダーとなるためには、なお改善の余地があり、それにはいくつかのコンピテンシー(行動特性)、特にこれまで保険会社中心だったサービスから顧客中心のサービスへの転換につながるeコマースとe-CRMの変革が求められる。 
以下、それぞれのデジタルの取り組み状況の調査結果を抜粋する。 

■デジタルマーケティング

保険会社はソーシャルメディア上で広告を出し、顧客とコミュニケーションを取っているが、チャットボットやAR/VRといったテクノロジーの活用は進んでいない。 

デジタルマーケティング
  • 80%以上の保険会社がInstagramを広告に利用している
  • 66社中8社のみ(12%)がFacebookのチャットボットを活用している
  • 66社のいずれもFacebookのVR/ARは活用していない

■eコマース

デジタルによるデータ統合で実現性向上が期待されるのが、商品のバンドルやクロスセル・アップセルだが、現時点で提供している保険会社はほとんどない。一部の保険会社では、セルフチャットサービスによる積極的なサポートを行っているにとどまっている。 

eコマース 
  • 66社中5社(8%)が複合型商品の提供をしている(例:損害保険と傷害保険の複合)
  • 66社中11社(17%)がウェブの商品ページにおいてクロスセルを行っている
  • 66社中11社(17%)が自動的に開始されるチャットサービスを提供している

■e-CRM

顧客にオンラインによるセルフサービスでの保全・保険金請求などの機能を提供する保険会社が増えている一方で、対応時間には1営業日以上かかっている保険会社が多く、改善の余地がある。 

e-CRM
  • 66社中14社(21%)が問い合わせのチャットに1分以内で応答している
  • 52%の保険会社が、顧客にアクセスしやすい場所にフィードバックページを設置している
  • 66社中12社(18%)が問い合わせに対して1営業日以内で回答している

■デジタル商品体験

半数以上の保険会社で自社のアプリを提供している。オンライン検索機能では、73%の保険会社で関連性のある結果を出しているが、検索結果をパーソナライズし、顧客に合わせてターゲット化できているのはわずか20%に留まる。 

デジタル商品体験
  • 半数超の58%の保険会社が自社アプリを顧客に提供している
  • 73%の会社でホームページの検索機能が適切な回答を返している
  • 13社(20%)のみが、過去の閲覧状況に応じたパーソナライズされた検索結果を回答している

保険業界において継続してデジタルを活用した先進的な組織として評価されるデジタルリーダーシップとなるには、現実の課題に取り組みながら、パーソナライゼーション、顧客中心主義、イノベーションの実現、データとテクノロジーの連携が必要となる。デジタルリーダーシップを発揮している企業は、以下のような「デジタルリーダーに必要な5つの行動の方向性」が調査から浮かび上がってきた。

  1. 顧客を価値提案の中心に据える
  2. すべての顧客との対話において、肯定的な感情的反応を生み出す。
  3. 行動を同期させ、データを活用するうえで重要な、先進的で統合された情報技術で価値を提供する。
  4. エコシステム全体でイノベーションを起こす
  5. 倫理観、持続可能性、幅広い世界観を日々の活動に取り入れる

まとめ

本レポートで示唆される、「デジタルリーダーに必要な5つの行動の方向性」を日本の保険業界で実践する場合、多くの技術的問題に直面することが想定されますが、まずは複数システム間にまたがる顧客体験・顧客行動のデータ・情報の同期とその効果的な活用が求められるものと考えます。 
顧客接点の高度化に向けたデジタル活用を進めるためには、その目的と最終的な将来像を構想したうえで、自社のデータの再確認が必要と考えます。顧客行動の可視化には、精度を保ったデータが不可欠です。一方で、多くの保険会社のデータは複数のシステムに分散され、またその精度やアクセスの容易性が十分に管理されているとは言えないケースが多くみられます。 
さらに、組織体制もデジタルを活用した顧客サービスを前提として変革が求められます。デジタル技術を前提とした企画力、最適な実現手段を導出する施策の立案、また安定的なシステム導入の重要性がますます増しています。 
アビームコンサルティングでは、保険会社の顧客価値向上のためのデジタル変革・デジタル施策構想、策定、実行のコンサルティングサービスを展開しています。 
保険業界のデジタル顧客接点の高度化を検討されている企業ご担当者様はぜひお問い合わせください。

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