住友商事株式会社

住友商事株式会社

Customer Profile

会社名 住友商事株式会社
所在地 東京都千代田区大手町2-3-2 大手町プレイス イーストタワー
創立 1919年
事業内容 総合商社。6つの事業部門と1つのイニシアチブで、グローバルで幅広い産業分野での事業活動を展開
資本金 2200億円

※会社名、肩書き、役職等は取材時のものです。

ITの効果評価プロセスを整備、最適な投資判断を目指す
グローバルのITコスト可視化と効果評価の高度化に挑戦

グループ全体で約900社、7万人強の社員を擁する住友商事株式会社。同社は、アビームをパートナーに、グループのITコストの可視化と、利用システムに対する効果評価プロジェクトを実施、プロセスを確立した。
これによって、グループ全体のITコストの可視化と効果評価に基づいた意思決定の高度化、施策の策定が可能になった。住友商事単体、主要なグループ会社・海外独立法人を対象に年1回のIT 投資効果評価を実施し、今後は対象の拡大と共に、効果測定を高度化させ、戦略的なIT 投資とDX推進につなげていく考えだ。

住友商事株式会社

プロジェクト概要

導入前の課題

  • 短期・中長期的なITコスト全体が可視化できていない状態の解消
  • ITに関する定常的な効果測定・評価が行われていない状況の克服
  • 差し迫った保守期限切れへの受け身的対応からの転換

ABeam Solution

  • IT 投資効果評価プロセス導入によるグループIT 投資判断高度化プロジェクト

導入後の効果

  • 住友商事単体と主要グル-プ会社、海外独立法人のITコストを可視化
  • ユーザーの評価も含めた効果評価結果による課題抽出を実現
  • 効果評価結果のIT予算策定に向けた活用の開始
  • 共通の評価軸による全体評価結果が投資判断の高度化に寄与

Story

塩谷 渉氏

ITコストの可視化や投資効果評価の仕組みはDXを推進する上で、大きな力を発揮します。さらなる高度化、チューンナップに取り組んでいきたいです

 

住友商事株式会社
理事 DX・IT統括責任者補佐
IT企画推進部長
塩谷 渉氏

Story

プロジェクトの背景

グループのITコストの可視化と投資効果評価プロセス整備が急務に

 住友商事株式会社(以下、住友商事)は、1919年創立の総合商社で、国内20カ所、海外109カ所に事業所を持つ。グループ全体の連結子会社・持分法適用会社は約900社、連結ベースでの社員数は7万8000人に上る。同社グループは金属、輸送機・建機、インフラ、メディア・デジタル、生活・不動産、資源・化学品の6つの事業部門とエネルギーイノベーションのイニシアチブ、そして国内・海外の地域組織が連携し、グローバルに幅広い産業分野で事業活動を展開。強固なビジネス基盤と多様で高度な機能を戦略的・有機的に統合することで時代の変化を先取りし、既存の枠組みを超えて社会課題を解決することで、新たな価値の創造を目指している。
 住友商事では、2022年3月期から24年3月期までの中期経営計画「SHIFT2023」で、成長戦略としてサステナビリティ経営の高度化を土台とし、DXを推進しながら次世代の収益を牽引するコア事業の育成を掲げている。また、グローバルでのDXセンターの設立やグループ会社約900社が利用するIT資源をまとめた「SCデジタル基盤」の展開など、DX実現に向けた先進的な取り組みも数多く実施している。
 その住友商事が今後のさらなるDX推進に向けた基盤づくりの一つと位置付けて、本プロジェクトを実施した。「DX推進にあたって、ITはビジネスオペレーションのための重要な経営リソースとして位置付けられます。その投資内容は多岐にわたるとともに複雑化しており、機動的で客観性のある投資判断が極めて重要になっています。そこで経営会議でも議論し、住友商事グループ全体で最適な判断をするための投資評価プロセスを整備し、ITコストの可視化とIT投資効果を評価することが必要だと考えました」と、住友商事 理事 DX・IT統括責任者補佐 IT企画推進部長 塩谷 渉氏は語る。

Story

アビームの選定理由

決め手は住友商事グループのビジネスとITへの理解と知見の深さ

 投資効果の判断には、投資コストと投資に対する効果をグループ一律の定義とプロセスで定期的に繰り返し可視化し、評価した情報が必要になる。しかし、住友商事では、そのための体系立てられた仕組みがなく、グループ全体で短期・中期的なITコストをつかむことができていなかった。さらに、定常的な効果測定や評価も行われておらず、システムの保守期限切れなどに伴う大規模な投資を事前に把握しきれていないなどの課題もあった。
 そこで住友商事では、ITの専門家ではなく、経営者の目線で投資効果を評価し、それを継続していくことで戦略的なIT投資を実現していこうと考えた。「評価の仕方に正解はないですし、まずは始めることが大切だと着手することにしました。総合商社というビジネスモデルは特殊で、国内だけでなく、世界的に見てもベンチマークはほぼ存在しません。参考にできる手法があるわけではないので、自分たちで評価の仕方を決めて、それをチューンナップしていくことにしたのです」(塩谷氏)。
 グループ連結経営の住友商事は単体で5000人以上、連結ベースでは7万8000人の従業員がおり、900社を超えるグループ会社全体で売上を上げている。そのため、ITコストを可視化する対象として住友商事単体のみでは一部でしかなく不十分で、グループ会社を対象とする必要がある。一方で、住友商事がグループ会社に広く共通的なシステムを提供している場合もある。それらを整理して、ITコストの可視化と投資効果を評価するために、まずIT企画推進部が可視化・分析できる範囲から始めて、グループ全体に広げていくことにした。
 その方針を決めた住友商事では、総合商社の業態に詳しく、住友商事の事業やITシステムに知見を持ち、深く理解していることを要件に、プロジェクトを共に担うパートナーを選ぶことにした。IT投資効果評価には詳しくても、総合商社のビジネスへの理解が深くないコンサルティングファームでは、定式化された基準やフレームワークの適用に労力を費やす上、型にはまった評価になってしまう可能性がある。そのやり方は住友商事の本意ではなかった。
 そこで住友商事のビジネスへの深い知見を持っており、企業や組織の枠を超えた社会課題解決を目指す共創パートナーでもあるアビームを選定した。「アビームには以前から様々なプロジェクトを支援してもらっていました。例えば、連結経営管理システム構築プロジェクトやグループ基幹システム構築プロジェクトなどです。そうした経験から総合商社の業態、そして住友商事グループのビジネスと業務、ITを深く理解しており、当社の実態に即し、運用可能な評価指標を作りたいという今回の目的を達成できるのは、アビームしかいないといっても過言ではないと思います」(塩谷氏)。

Story

プロジェクトの目標・課題と解決策

5つの評価軸に基づき21年度から投資効果評価を実施

 住友商事では、2021年度は住友商事単体の90システム前後、22年度は国内の主要なグループ会社20数社と海外独立法人を対象に、ITコストの可視化とIT投資効果評価を実施することにした。初回はスタートが21年5月頃で、22年の年明けには集計を完了させる必要があったため、プロジェクトはスタート直後から複数の作業を同時並行で立ち上げ、推進することとなった。
 投資効果は、予算対比、合目的、システム運用、ユーザー、課題対応状況の5軸で多角的に評価する。そのための調査はユーザーへのアンケートも含めて設計や運用が複雑なため、各部門の担当者への説明資料や評価に使うドキュメントなどの材料はすべてアビームの支援で準備した。「ITコストの可視化と効果評価の準備と各部門に向けた展開はほとんど並行で行わなければなりませんでした。それを行う上で、アビームのプロジェクトマネジメント力やシステム開発での経験とノウハウが大きな力を発揮しました。特に関係者が多岐にわたることから生じてしまった遅れに対する都度の柔軟なスケジュール、作業調整といったプロジェクトマネジメントのおかげでタイトなスケジュールにもかかわらずとりまとめることができました。また、評価結果を最大限活かすための試算値の提案や、複雑な当社の組織やシステムの構成と評価結果を分かりやすく全体感で図示いただけたことで、気付きもありました。アビームの力で、これから毎年実施していく投資効果評価のプロセス確立に向けた大きな一歩を踏み出すことができました」と、住友商事 IT企画推進部 活用推進チームリーダー 宮本 秀治氏は説明する。
 住友商事では、各事業部門で所管、運用しているシステム担当者への説明と協力依頼を実施。システムの運用を担うSCSKに聞き取りを行うとともに、主計部門からは部門に計上されたソフトウェア資産も漏れなく洗い出していった。その上ですべてのシステムを対象に調査を実施。22年初めには住友商事単体のITコストとシステムに対する投資効果と課題を明らかにすることができた。
 その成果の上に、22年度には国内の主要なグループ会社と海外独立法人へと範囲を広げ評価を行った。海外独立法人はグローバルで標準化しているため、一律にアプローチしたが、国内のグループ会社は準備に時間をかけ、IT企画推進部内の担当社員を介して調査を進めていった。「初年度に、それぞれのタスクにかかる時間をつかんでいたので、アンケートも国内、海外とも返信されるタイミングを予測することができました。そして範囲を広げるだけでなく、次の施策に生かせるようなアウトプットを出すにはどうすればよいかを考えながら、取り組みを進めていきました」(宮本氏)。
 アビームは初回で全体スキームを策定した経験を生かして、ナレッジを住友商事に移転。評価結果を意思決定につなげるための取り組みができるようにサポートした。加えて、説明資料などの英語化やカスタマイズ、調査結果を相対評価する際に不可欠な外部の情報も提供し、住友商事が現状を俯瞰的に可視化できるように支援した。

 

IT投資効果の評価方法
 

IT投資効果の評価方法
宮本 秀治氏

 

アビームとは頻繁に議論する中で、多くの知見の提供を受け、感謝しています。今後も適切なアドバイスを期待しています

住友商事株式会社
IT企画推進部
活用推進チームリーダー
宮本 秀治氏

 

Story

導入効果と今後の展望

ITコストの全体像を可視化でき、効果評価に基づくIT投資の高度化目指す

 PCやネットワーク、全社システムなどグループ全体で使うITは資産計上されるが、各部のソフトウェア資産や業務委託費などは部門に計上されており、全体のITコストをつかむことができなかった。それが21年度と22年度のITコスト可視化とIT投資効果評価のプロセスで住友商事単体、国内の主要グループ会社と海外独立法人のITコスト全体が可視化され、効果の評価と課題もある程度明らかになった。「アビームが当社の意図をくんでプロジェクトをリードし、伴走してくれたおかげで、今までつかめなかったITコストは可視化できました。一方、投資効果評価に基づく施策策定はまだ道半ばです。ITは競争力の源泉なので、“ともかくコストを下げればよい”というわけではありません。場合によっては投資を増やすことが必要になるケースもあります。住友商事単体とは異なり、比較的業種内での他社例と比較がしやすいグループ会社も含めて、投資効果評価の高度化にむけて、さらに取り組みを強化していきます」(塩谷氏)。
 住友商事では今後、対象グループ会社を拡大し、ITコストの可視化とIT投資効果評価プロセスを実施し、評価結果に基づく分析、住友商事の他の取り組みと組み合わせたスキームの高度化、IT施策決定者の巻き込みによる評価結果の施策への落とし込み、施策の評価サイクルの確立などに取り組んでいく。
 その中で、グループのIT投資状況に関する経営層の一層の理解を得るとともに、適切な投資判断と効果測定を高度化させることで、グループ全体のIT投資とDXを加速度的に推進していく考えだ。

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