東京海上ディーアール株式会社

東京海上ディーアール株式会社

Customer Profile

会社名 東京海上ディーアール株式会社
所在地 東京都千代田区大手町1-5-1 大手町ファーストスクエア ウエストタワー23F
創立 1996年8月 2021年7月東京海上ディーアールに社名変更
事業内容 リスクマネジメントにかかる各種コンサルティング・調査研究業務
資本金 1億円

※会社名、肩書き、役職等は取材時のものです。

新規事業開発の企画から開発まで全工程を一貫して支援
サプライチェーン課題解決のための新しいサービスを提供

東京海上グループのデータビジネス中核機能を担う東京海上ディーアール株式会社。同社はアビームをパートナーに新規事業開発を実施し、社会課題であるサプライチェーン管理を強靱化・迅速化するサービス「Chainable(チェイナブル)」の提供を開始。サプライチェーンに関わる情報の一元的な管理や、豊富なコミュニケーション機能によって、リスクを踏まえた意思決定の迅速化や企業間連携の強化を図る。アビームがアイデア創出から設計、事業計画、開発、マーケティング戦略まで伴走し、開発開始から1年で事業化した。

 東京海上ディーアール株式会社

プロジェクト概要

導入前の課題

  • サプライチェーン課題解決に寄与するグループシナジーを発揮できる新規事業の創出

ABeam Solution

  • 新規事業の企画からサービス開発までのワンストップでの支援

導入後の効果

  • サプライチェーン課題を共創で解決する新規事業「Chainable」サービスの開始
  • スピード感を持ったデジタル戦略実践のための取り組みの着手

Story

佐藤 一郎氏

アビームの伴走があったからこそ、自信を持ってプロジェクトを進めることができました。今後も大いに力になってほしいと思います

 

東京海上ディーアール株式会社
パートナー
企業財産本部
本部長
佐藤 一郎氏

Story

プロジェクトの背景

サプライチェーンに関わる課題解決のための新事業創出を計画

 東京海上ディーアール株式会社(以下、東京海上ディーアール)は、2021年7月、東京海上日動リスクコンサルティング株式会社を母体に、東京海上グループが成長戦略として掲げる「データ戦略」の中核機能として、デジタル技術やデータの利活用を通じて社会課題を解決することを目指して始動した。
 近年、様々な企業がSDGsやESGの取り組みを進める中、サプライチェーン上の環境・社会リスクを認識し、安定供給を実践するためのサプライチェーンの可視化や、サステナブルなサプライチェーン構築が重要になっている。同社では以前より提供していたリスクマネジメント専門コンサルティングサービスに新たな付加価値を加えて、デジタル技術の活用による、新たな事業創出とサービス提供を図ろうとしている。「データビジネスは非常に重要で、特にサプライチェーンマネジメントは企業の経営課題の1つですが、これまでは自社で提供できるプラットフォームがありませんでした。そこでデータを蓄積・活用してサプライチェーンを可視化し、顧客のニーズに応えられるようなサービスを作ろうと考えました」と東京海上ディーアール 企業財産本部 企業財産リスクユニット チーフリスクエンジニア 工藤 智宏氏は語る。
 そうして東京海上ディーアールでは、企業のサプライチェーンマネジメントにおける課題解決のための新事業を創り出すことを計画。プロジェクトはスモールスタートで、スピード感を持って進めて成長させ、東京海上ディーアールの今後の事業創出の先駆けになることを目指した。

Story

アビームの選定理由

決め手はシステムありきではなく東京海上ディーアールの立場に立った提案

 東京海上ディーアールでは、今回の新規事業創出の取り組みに当たって、自社の持つ強みや技術から事業内容を決めるのではなく、リスクマネジメントの経験を生かして、市場のニーズをつかみながら、マーケットインでアイデアを出し、サービスの開発、実際の展開までを行っていこうと考えた。
 「私たちはリスク領域のプロフェッショナルだという自負があるため、社内の一部では外部のパートナーと新規事業創出を行うことに懐疑的な意見もありました。ただ社会課題解決のために新しい事業を始めようという時に、いくら経験が豊富で自信があっても、同じ会社の1つの部署、つまり似た視点を持った限られた世界では、出てくるアイデアも限定的になってしまいます。そこで、様々な視点を融合させることで、思ってもみなかった要素が加わり、大きな可能性が生まれることを期待しました。そのためには、プロジェクトに参画する優れたパートナーを見つけることがとても重要だと考えました」と東京海上ディーアール パートナー 企業財産本部 本部長 佐藤 一郎氏は説明する。
 東京海上のグループ会社からアジャイル活用支援をしていたアビームを紹介してもらい、パートナーに選んだ理由を工藤氏は次のように述べる。「アビームのコンサルタントはいきなりシステム構築の話から進めるのではなく、当社の目指す姿・思いや実現したいことからブレイクダウンして議論を進めてくれました。その進め方や当社の目線に立ってくれている姿勢に好感が持てましたし、当社のために専門家の観点から率直に意見を出してもらえたのはとても助かりました。そのため、アビームをパートナーに一緒にプロジェクトを進めることを決めました」。
 こうして、東京海上ディーアールは、アビームのやり方が自分たちの思いと重なると実感し、アビームとなら自信を持って新規事業を生み出せると確信できた。

Story

プロジェクトの目標・課題と解決策

企画から開発までワンストップで推進し、1年ほどで事業化を実現

 新規事業創出プロジェクトの検討は2021年5月に始動、2022年1月からサービス開発を開始し、β版開発を経て、2023年4月に正式サービスを提供した。アビームはアイデア創出、コンセプト設計、事業計画、サービス開発、マーケティング戦略までの全工程を伴走して支援した。
 新規事業を企画するフェーズでは、デザイン思考の原理原則を活用した。東京海上ディーアールが作りたい未来の社会をイメージしながら、事業アイデアを創出し、マクロ環境を分析するPEST分析、BMC(ビジネスモデルキャンバス)、VPC(バリュープロポジションキャンバス)などのフレームワークを活用することで事業アイデアの価値を可視化した。さらに、事業アイデアをカスタマージャーニー(顧客が購入に至るまでのプロセス)やストーリーマッピング(ユーザー体験を時系列に優先順位順に配置した図)などに乗せることでより具体化したうえで、ストーリーボード(イラストを用いたストーリー化の手法)でビジュアル化して事業アイデアを拡張した。
 「サービス開始までの全工程で、アビームのコンサルタントとは毎日オンラインでやりとりしていました。アイデア創出の場面では、ワークショップで参加者がオンライン上のホワイトボードにアイデアを出すと、翌日にはアビームのコンサルタントが整理してまとめた資料が出来上がっていて、クリエイティビティとスピード感に驚きました。アビームの専門性と総合力、密なコミュニケーションのおかげで、狙い通りのスケジュールで完遂できました」(工藤氏)。
 サービス開発のフェーズでは、アジャイルの原理原則を活用したアプローチで開発を進めた。「持続的な価値提供を実現するサービス」を方針に掲げ、最初から多くの機能を作るのではなく、開発予算と期間を見極めながら、真にユーザーのニーズに応える機能を洗い出し、優先順位とスコープをコントロールすることで、プロジェクトの推進スピードを加速させた。サービス構築に当たっては、グループ全体での申請など細かな規定も多いが、アビームは東京海上グループの持つ経験を生かし、そういった点を見越して調整をリードした。
 2022年9月に完了したβ版開発では、最終段階でテストを止めたこともあった。テストは毎日実施し、リアルタイムでレスポンスをチェック。不具合を把握して、必要な修正をしていく。その中で、外部との接続部分のパフォーマンスが想定より悪く、予想しなかった不具合が起きていたことが分かった。そこで、テストを止めて原因を究明し、設計を見直した結果、パフォーマンス問題を解決できた。「『テストを止めて設計を見直しましょう』とアビームに言われ、止めればスケジュールが間に合わなくなるという不安がありました。しかし、アビームの判断は的確でした。瀬戸際での決断力も信頼できました」(工藤氏)。
 マーケティング戦略を立案し実行を計画するフェーズでは、実際に本サービスを利用するペルソナ(ユーザー像)だけではなく、サービス導入の意思決定者のペルソナを仮説立てし、インサイドセールスプロセス、ペルソナのカスタマージャーニーを可視化することで、最小の投資で最大の効果を得られるマーケティング施策を洗い出した。さらに、マーケティング施策ごとにKPIを設計しながら、PDSA(Plan-Do-Study-Act)サイクルを実行できる環境を整えた。
 アビームが新規事業創出に必要となる要素を一貫して全面的に支援し、グループ企業はもとより、社内の関連部署や外部パートナーなどプロジェクトに関わる多岐にわたるステークホルダーを、価値共創リーダーシップを発揮してリードした。利害関係を超えて1つのサービスを生み出そうとした取り組みによって、計画通りの事業化が可能になった。

 

サプライチェーンコミュニケーションプラットフォームサービス概要(将来像)
 

サプライチェーンコミュニケーションプラットフォームサービス概要(将来像)
工藤 智宏氏

アビームと毎日やりとりする中で、信頼関係を築くことができました。サービスはまだ道半ばなので、今後の高付加価値化に向けての支援にも期待しています

東京海上ディーアール株式会社
企業財産本部
企業財産リスクユニット
チーフリスクエンジニア
工藤 智宏氏

Story

導入効果と今後の展望

ESG/SDGsの領域も含めたサプライチェーン課題の解決を目指す

 2023年4月、サプライチェーンプラットフォームサービス「Chainable」を計画通り開始した。「Chainable」は、導入企業のサプライチェーンに関わる情報を一元的に管理することで、リスクを踏まえた意思決定の迅速化と、コミュニケーションの負荷低減を図るコミュニケーションプラットフォームだ。有事には災害情報をプラットフォーム上に提供することで、これまでアナログな情報収集に頼らざるを得なかった企業のリスク把握、各所とのコミュニケーション、意思決定の迅速化を支援する。また平時においても豊富なコミュニケーション機能を活用することで、安定調達をかなえるリスク評価や、企業間のつながりの構築、効率的なコミュニケーションの推進が可能になる。こうして、不確実性が高く変化の速い経営環境でも、企業が自社のビジネスの根幹となるサプライチェーンにまつわる意思決定を確実かつスピーディーに行えるように支援する。「コンサルティングは人が行うビジネスですが、デジタルによる『Chainable』のサービスはその対極に位置する新しいビジネスです。まずはスモールスタートして新事業として開始しましたが、他の部門からも高い評価を得ており、うれしい限りです。サービス開始をきっかけにして、他の部門との新たな価値創出への期待も膨らんでいます」(佐藤氏)。
 サービス開発をわずか1年ほどで完了させ、市場に提供できたことは、東京海上ディーアールが今後デジタル戦略を実践していく上でも大きな意味があった。「今回、開発スピードの観点で見ると、グループ全体のルールにのっとって進めるために、慎重を要する部分もありましたが、その中で最大限スピーディーに進めることができたと自負しています。今回の取り組みをきっかけに、よりスピード感を持って価値提供ができるよう制度、仕組みを強化していく動きなども出てきていて、今後の様々なサービス開発に生かすことができると考えています」(佐藤氏)。
 東京海上ディーアールでは、「Chainable」の目指す将来像を、災害以外のESG/SDGsの領域も含めた広いサプライチェーン課題の解決であると位置付け、各企業のESG/SDGsへの取り組みをアピール/スコアリングできる機能や、サプライヤー選定を支援する機能、東京海上ディーアールが元来持つノウハウとの融合による高度なコンサルティングサービスへの展開、東京海上グループのアセットとの連携、それに伴うエコシステム化を最終到達点として目指している。そのために、アビームの支援を得ながら、「Chainable」のさらなる高付加価値化を図り、2027年度契約顧客百数十社、売上数億円規模の目標を立てた。「Chainable」にアセットやノウハウを蓄積し、他のプラットフォームとの連携などにより、サプライチェーン全体での社会課題の解決を目指していく。

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