デジタル革命の時代を勝ち抜く新たな競争優位の獲得に向けて

宮丸 正人

デジタルテクノロジーの急速な進歩によって、「デジタルにつながる世界」が拡大し、そこから生まれる「デジタルな価値(デジタルバリュー)」が、人間の活動や営みを革新するデジタル革命の時代が到来している。デジタル革命の時代を勝ち抜く新たな競争優位の獲得に向けて、企業は今こそ顧客が抱えるジョブ(用事・仕事)を解決するために「デジタルバリュー」の活用を加速し、顧客への提供価値を再構築する力を磨く必要がある。

宮丸 正人

戦略ビジネスユニット長
兼 経営企画グループ長
執行役員 プリンシパル

デジタルトランスフォーメーションに取り組む「目的」をどこに定めるのか

産業界ではグーグル、アマゾン、フェイスブック、ウーバーテクノロジーズといったゲームチェンジャーたちが次々と登場し、デジタル化によって創造されるデジタルバリューを活用してビジネスモデルや業界を再定義しています。時には既存のプレーヤーがディスラプト(破壊)されることもあるデジタル革命の時代とは、とてもイノベーティブでエキサイティングな時代である一方、企業にとってはこれまで経験したことのない競争の時代が到来していると言えるでしょう。

デジタルバリューとは、「デジタルにつながることによって創造される価値」と定義することができます。サイバーとフィジカルがデジタルにつながる価値、デジタルにつながったデータがサイバー上に蓄積されることによって高度な認知・予測・実行が実現される価値、そして企業と企業はもとより、企業と個人もデジタルにつながることによる価値などが挙げられます。

デジタルテクノロジーの急速な進化を受けて、日本企業の経営層の方々から、「デジタル化の効果を自社の競争優位につなげたい」、「そのためのデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組みたい」というコンサルティングテーマをいただくケースが飛躍的に増加しています。こうしたプロジェクトにおいて私たちが最も大切にしていること、それは、DXに取り組む「目的」をお客様としっかり共有して価値共創に取り組むということです。

自社の現在の競争優位を維持・強化することをDXに取り組む目的とするならば、デジタル化を促進することによって、企業内部の生産性や効率性を大幅に高め、既存の提供価値を磨き上げることが優先されるでしょう。しかし、冒頭で述べたように、デジタル革命の時代の既存の競争優位は、デジタルディスラプターによって破壊される脅威を常に抱えているということを忘れてはいけません。磨いても磨いても、破壊的イノベーションがいつ、どこから襲ってくるか分からないのです。

では、企業はDXに取り組む目的をどこに定めるべきなのでしょうか。私たちは、「デジタル革命の時代を勝ち抜く新たな競争優位を獲得すること」をDXに取り組む目的に定め、デジタルバリューを手段として活用することで、自らの顧客への提供価値を再定義する活動こそが、企業として取り組むべきDXの本質であると考えています。

バリュープロポジションの再構築と新たな競争優位の獲得を目指す

デジタル革命の時代を勝ち抜き新たな競争優位を獲得するために、企業はどのようにDXに取り組むべきなのでしょうか。

アビームコンサルティングでは、「Connected Enterprise」のコンセプトの下、デジタルにつながる価値を企業間で共創する「アビームエコシステム」を提供しています。私たち自らがビジネス・イノベーション・プラットフォームを提供することによって、デジタルにつながったお客様の新たなデジタルバリューを繰り返し創造する「DX生態系」を広げていくことを目指しています。こうした共創プラットフォームを拡大することによって、価値創造のスピードが圧倒的に高められ、お客様の経営資源や経験値による限界に閉じない、継続的なDXへの取り組みが可能となるはずです。

アビームエコシステムを通じたお客様のDX支援に加えて、アビームコンサルティングの戦略ビジネスユニットでは、お客様の企業活動の内部に埋め込まれた「デジタル・イノベーション・エコシステム」の構築を推進しています。

この社内エコシステムは、デジタルバリューの①探求~発見、②構築~形成、③価値提供から成るビジネスモデル・イノベーション・プロセスと、①~③を繰り返し実行する④土台(DX基盤)の実装によって構成されます。①~③のイノベーションプロセスでは、デザインシンキングやリーンスタートアップの実践の他、オープンイノベーションやCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の活用など、イノベーションを創出する最新の方法論や手法が、お客様の特性に合わせて体系化されています。

加えて、④の土台(DX基盤)の実装では、①~③のイノベーションプロセスを経営システムに落とし込むさまざまな変革手法を体系化しています。ビジネスモデルイノベーションを加速させる人材育成や社内プロセスの構築手法に加え、これらを経営システムに組み込むためのガバナンス・組織・人事制度などに及ぶ変革プログラムを連動させることによって、デジタルバリューを共創する社内エコシステムの形成を支援します。

私たちは、お客様の企業活動の中にデジタルイノベーションを加速させるエコシステムを共創し、さらにその企業内のイノベーションエコシステムをアビームエコシステムを通して社外ともつなぐことで、お客様のDXを支援します。そして、デジタルエコシステムの拡大を通じて、日本企業のバリュープロポジションの再構築と新たな競争優位の獲得に貢献していきます。

顧客が抱えるジョブを解決することから全ては始まる

私は、DXとはデジタルバリューの破壊力を活用することによって、イノベーションの成功確率を高める取り組みだと考えています。

従って、「顧客が片づけたいジョブ(用事・仕事)」を特定し、それを解決することからイノベーションの創造が始まるという原則を常に意識しながら、お客様のDXへの挑戦を支援しています。

『イノベーションのジレンマ』の著者であり、「顧客が片づけたいジョブ」という概念を世に送り出したハーバード・ビジネス・スクール教授のクレイトン・M・クリステンセンは、その近著『ジョブ理論』の中で、このジョブを「ある特定の状況で顧客が成し遂げたい進歩(プロダクトではなくプログレスである)」と定義しています。

私たちもDXへの取り組みを通じて「お客様の成し遂げたい進歩」を実現することにより、自らのイノベーションの成功確率を高めていきたいと思います。

執筆者

宮丸 正人

page top