米国当局動向情報 連邦金融機関検査協議会による銀行秘密法/アンチ・マネーロンダリング検査マニュアル改訂版の発行

1.はじめに

アビームコンサルティング(USA)では、米国当局の動向をリアルタイムに把握できるよう、各当局が発信する情報の抄訳毎月、考察と共にご提供しています。
今回は連邦準備制度理事会(FRB)が2020年4月に発表したSRレターの抄訳をお届けします。

2.考察

本声明は、リスク重視の監督アプローチを強化することを主目的として、銀行秘密法/アンチ・マネーロンダリング(Bank Secrecy Act/Anti-Money Laundering:以降、BSA/AMLとする)の検査マニュアル改訂を図った件に関するものです。

>検査マニュアル改訂版の抄訳はこちらをご参照ください。

規制当局は、2019年7月に「SR19-11:BSA/AML監督におけるリスク重視のアプローチに関する共同声明」を発表し、銀行が人員や予算等の限られたリソースを効果・効率的に割り当てるために、自らのリスク特性に適合したBSA/AML 遵守計画を立てることが重要であることの蓋然性を示しました。リスク重視のアプローチは、FATF(Financial Action Task Force;金融活動作業部会) 勧告の冒頭にも揚げられていることから高い重要性であることと捉えられます。今回の改訂版マニュアルは、この考えに基づき、検査やテストの手順などの具体的な指針を提供しています。

また、規制当局は、検査において、検査官が強制力を持つ規制要件と、指針や監督上の期待における検討要件を、記述の上で明確に区別するように留意しました。これは、各金融機関のBSA/AMLコンプライアンス・プログラムにおいて、たとえ弱点や欠陥、厳密な法解釈上の違反があったとしても、是正する余地があれば、即時に強制措置の対象とはならないということを意味します。この考えを補足するため、直近2020年8月に公表された「SR20-19:BSA/AML要件の施行に関する共同声明」では、業務停止命令等の強制措置の対象となる要件をさらに明確にしています。

以上より、銀行は提供する商品/サービス/取引形態/顧客属性等を軸にBSA/AML遵守計画を立て、保有するリスクの種類や量を特定・評価してBSA/AMLコンプライアンス・プログラムを作成することが重要になります。さらには、コンプライアンス担当者および経営層が検査官と密にコミュニケーションをとり、強制措置の対象とならないように検査上の懸念事項を改善していくことが必要となります。銀行は改訂版マニュアルを参照することで、これらの対応を具体的に進められるものと思われます。

3.連邦金融機関検査協議会による銀行秘密法/アンチ・マネーロンダリング検査マニュアル改訂版の発行

連邦準備制度理事会
ワシントン D.C. 20551
銀行監督・規制部門

SR 20-11
2020年4月15日

連邦準備銀行および連邦準備制度監督下にある銀行機関の監督官および適切な監督・検査担当官各位

表題:連邦金融機関検査協議会による銀行秘密法/アンチ・マネーロンダリング検査マニュアル改訂版の発行

適用範囲
当レターは、連邦準備制度監督下にあり、銀行秘密法の対象となる銀行機関に適用される。

連邦金融機関検査協議会(FFIEC)のメンバー機関1 は、銀行秘密法/アンチ・マネーロンダリング(BSA/AML)検査マニュアル(以下「当マニュアル」)について、改訂したセクションおよび関連する検査手順を公表した。当マニュアルは、銀行のBSA/AMLコンプライアンス・プログラムの適切性を検査官が評価する際の指針を示す。今回の改訂版は、BSA/AML検査プロセスにより一層の透明性をもたらすが、新たな要件を定めるものではない。FFIECは、今回の改訂において、財務省のFinancial Crimes Enforcement Network(金融犯罪取締ネットワーク)と連携した。

今回のマニュアル改訂は、BSA/AML監査において、規制当局によるリスク重視の監督アプローチを強調し、強化することを主眼として行われた。当マニュアルは、検査官がマネーロンダリングやテロ資金供与、その他の不正金融活動に対するリスク・プロファイルに基づいて、銀行のBSA/AMLコンプライアンス・プログラムを評価する必要性を強調している。また当マニュアルは、検査官に対し、BSA/AML検査の際、検査やテストの手順などを銀行のリスク・プロファイルに合わせて行うとともに、リスク重視のテストや分析を行うよう、指針を提供する。さらに、当マニュアルは検査官に対し、銀行は柔軟性をもって各々のBSA/AMLコンプライアンス・プログラムを策定しており、それほど重大ではない弱点や欠陥、厳密な法解釈上の違反があったとしても、それのみではプログラム自体が不適切であることにはならない点を指摘する。

規制当局はまた、今回の改訂において、強制力を持つ規制要件と、指針や監督上の期待における検討事項とを、記述の上で明確に区別するように留意した。さらに、今回のマニュアル改訂においては、2014年の最終更新以降に生じた法規制上およびその他の変更事項が反映されている。より詳細な情報については、添付のFFIECによる共同声明を参照されたい。

当マニュアルにおける新規および改訂されたセクションについては、マニュアルの目次およびFFIECのBSA/AMLインフォベース2 に2020年付の更新日を示した。規制当局は、当マニュアルの2014年版の残りのセクションについても、レビューおよび改訂を継続して行う。残りの項目の改訂版については、段階的に公表予定である。

連邦準備銀行は、管轄内の連邦準備制度監督下にある国内および外国の銀行組織、および監督・検査担当官に当レターを配信すること。今回の改訂版の発行に伴い、連邦準備制度検査官は、今後行われるBSA/AML検査において、当マニュアルで定められた検査手順を用いる。FFIECによる「BSA/AML検査マニュアル」に関する質問は、以下に寄せられたい。Jennifer White、主任金融機関・政策アナリスト、(202)452 3964、またはKoko Ives、マネジャー、BSA/AMLコンプライアンス・セクション、(202)973-6163.
また、質問は理事会の公式ウェブサイト3 経由でも受け付けている。

署名
銀行監督・規制部門
理事
Michael S. Gibson

下記に優先する:

  • SRレター14-10、「2014年連邦金融機関検査協議会による銀行秘密法/アンチ・マネーロンダリング検査マニュアルの発行」

添付:

脚注:

  1. FFIECの6つのメンバー機関のうち、5つの機関がBSA/AML検査マニュアルを策定および発行。すなわち、連邦準備制度理事会(FRB)、連邦預金保険公社(FDIC)、全国信用組合管理機構(NCUA)、通貨監督庁(OCC)、国家連携委員会(SLC)(「規制当局」と総称)。その他に消費者金融保護局(CFPB)もFFIECのメンバー機関である。
  2. https://bsaaml.ffiec.gov/ を参照。
  3. https://www.federalreserve.gov/apps/contactus/feedback.aspx を参照。

最終更新日:2020年4月16日

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