まちづくりレポート

※2017年8月時点の記事/プロフィールです。
 

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アビームコンサルティングでは、まちづくりに関する自治体の案件や企業・機関が実施する
地方貢献性の高いプロジェクトに多数携わっています。
ここでは、特色のある3つのプロジェクトに携わる担当社員が、
アビームの取り組みを活動の背景にある地域・施設の特徴とともにレポート形式で紹介します。

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地域医療の核となる病院が住民に安心な暮らしを提供するためには、設備や人材に加えて、安定した経営基盤が欠かせません。アビームコンサルティングは、太田記念病院の3カ年にわたる中期経営計画策定と実行計画の支援を行い、院内のビジョン共有とその実現に向けた戦略立案を図りました。現在、計画の実行とモニタリングをサポートしています。

 

3カ年中期経営計画により 成長発展を目指す

群馬県南東部に位置する太田市は富士重工業の企業城下町として発展した北関東有数の工業都市であり、さまざまな企業の製造拠点が集積しています。

太田記念病院は、戦後間もない1946年に富士重工業健康保険組合により設立されました。現在は、404床のベッド数と26の診療科のほか、地域救命救急センター、地域周産期母子医療センターを設置し、地域災害拠点病院としての役割も担っています。2012年の新築移転と名称変更を機に、3カ年ごとの中期経営計画を策定し、着実な成長発展に向けたロードマップ作りに取り組んでいます。

アビームは、2014年に太田記念病院の放射線治療機器の整備について検討支援を行いました。その過程で周辺医療機関や地域の状況を把握していたことが評価され、2016年4月~2019年3月までの計画策定支援を受託しました。

 

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外観
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エントランス

         ※太田記念病院

実行計画策定のため、 26の診療科と目的意識を共有

次期中期経営計画における重要なミッションの1つが、DPC(診断群分類別包括評価)においてⅡ群※の基準を満たすことでした。

当該基準の取得は、経営の安定に大きく貢献します。基準の条件は難易度の高い手術の件数、一定数以上の研修医の確保・育成などです。DPCをはじめ、さまざまなミッションを達成するためには、26の診療科それぞれの実行計画を策定し、目標の達成度をモニタリングして経営層や現場へフィードバックする必要があります。

私たちは各診療科の部長26人へのヒアリングを通じて、病院が中期経営計画により目指すビジョンを共有するご支援をしました。診療科ごとに収益構造が違いますし、院内でも担っている役割も異なります。個別のヒアリングにしっかりと取り組んだことが、実行計画の策定とその推進に大きく貢献したと考えています。

※DPCⅡ群に該当するのは大学病院本院に準じた診療密度と一定の機能を有する病院。「診療密度」「医師研修の実施」「高度な医療技術の実施」「重症患者に対する診療の実施」の4つの要件において一定の基準を満たす必要がある。

 

自分たちで業務を見直し、 改善する文化を創る

現在、実行計画がスタートして、モニタリングが稼働しています。現場においては、自分たちが成果を上げている指標について、経営層が把握・評価し、フィードバックすることで、経営への関心やモチベーションの向上につながることを期待しています。
 
一般的に病院は経営の課題を解決する際に、他病院との提携や、仕入れ先の交渉など、外部との関係性に目を向ける傾向があります。しかし、これからは業務を可視化して、自ら再構築していくことが求められます。そうした文化を創り、定着させることが、リアルパートナーとしてのアビームの役割と認識しています。
 
ただ他病院の成功例を提示するのではなく、仮説と検証を何度も繰り返して、お客様とともに課題解決へアプローチするアビームならではの支援が効果を発揮しているのではないでしょうか。また、私たちの実行支援が終わった後も、改善を継続できるように、マニュアルの作成なども含めて、環境整備を図っています。
 
 
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※地域医療を支える医療現場の様子

まちづくりの経験を活かして、 病院と行政をつなぐ

期経営計画により太田記念病院の機能を拡充することは、地域医療貢献にもつながります。

救命救急医療や災害時対応に取り組むほか、健康増進教室や症例の勉強会など地域の方々との触れ合いも、ステークホルダーとの関係強化として位置付けられています。その一方で、少子高齢社会においては病院だけではなく、自治体の医療計画と連携した地域全体の医療の充実が求められます。

しかし、民間病院と行政との距離はまだ遠く、政策誘導を試みてもうまく機能しにくいという現実があります。私は将来的に、病院経営層の意思や価値観を十分に把握した上で、行政とうまくつないでいく役割を果たしていきたいと考えています。

もちろん、地域にある複数の民間病院が連携してネットワークを強化することも必要です。医療に関わる前に、まちづくり支援を担当していた経験を活かして、地域全体の医療安定と医療費適正化の推進を提案したいと考えています。

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※地域交流“開かれた病院”の様子

ステークホルダーの声

 

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都市に住む人々が気軽にスポーツや文化を楽しむために、体育館や市民ホールなどの公共施設が大きな役割を果たします。
アビームコンサルティングは、横浜市市民利用施設予約システムと付随業務の改善支援を通じて、自治体が提供するサービスの利便性向上と平等・公正な抽選方式を実現しました。
 

最新のICT活用により 新たな公共施設予約システムを構築

横浜市は政令指定都市の中で最も人口が多く、373万人を超える市民が暮らしています(2016年7月現在)。大規模な都市においては、市民から寄せられる要望も膨大かつ多岐にわたり、自治体がきめ細かなサービスを提供するためには、ICTの活用が欠かせません。
 
しかし、情報通信を取り巻く環境の変化や技術の進化により、従来のシステムでは十分な機能を果たせない場合もあります。その1つが、横浜市にある公共施設の予約システムでした。市内にある75カ所のスポーツ施設と20カ所の文化施設について、市民が自由に利用できるようにWebで空き情報を確認し、利用予約を受け付けるものです。

アビームは、このシステムと、システムの補佐業務を実施するサービスセンターの調査と課題の抽出、それに基づく新しいシステム構築と業務改善の支援を担当しました。
 
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横浜市西スポーツセンター プール

 

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神奈川区民文化センター ホール

※予約システム利用できる施設一例

利用者と運営者の双方に緻密な調査を実施して、課題を抽出

計画がスタートしたのは2011年で、コンペテイションを経てアビームが調査業務を横浜市から受託し、約3カ月の調査を行って課題について仮説を立てました。その仮説に準じて、2012年に大規模な調査を実施し、改善支援の提案を実施しました。利用者である市民へのアンケートはもちろん、自治体職員及び施設の運営を行っている民間業者へのヒアリングを実施し、さまざまなデータを分析しました。

従来のシステムは10年以上前に構築したものなので、現在Web上でサービスを提供している企業のシステムと比較すると、ユーザビリティの視点で課題がありました。具体的には、利用を申し込む際、事前登録が必要ですが、Web上から申請できない状況でした。また、人気施設の抽選においては、不正なプログラムを使った申し込みにより抽選枠が埋まってしまい、公正さが損なわれるという問題がありました。

 

市民の目線で利便性の高い システム構築を目指す

こうした課題の解決に向け、システム開発の予算や期間などの制約を踏まえながら、実現性の高さや費用対効果により優先順位をつけました。

この作業においては、調査で収集したデータの分析結果を踏まえて、市民の目線から利便性の高いシステムを構築できるように心がけました。その結果、優先順位の高い課題の解決を次期システムの要件にして、2013年当初には開発業者の選定へと進みました。その後、開発業者に対する支援を中心に行い、マイルストーンにおける進捗管理によりシステム構築を推進しました。

2014年1月に新システムが稼働し、最大の課題だった事前登録申請をWeb上で実施できるようになりました。また、プログラムによる抽選申し込みの不正、予約枠の譲渡による不正防止対策を実施しました。
 

■ 新旧システムの比較(主な変更点)

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リアルパートナーとして 目標を共有する大切さを実感

アビームはお客様のリアルパートナーとして目的と意識を共有し、共に歩みながらミッションを達成することを理念としています。

今回の案件により、その姿勢の大切さを改めて認識しました。新システムの稼働が1月だったため、年末年始を返上して最終段階の詰めを横浜市の担当の方々が実施してくださったからです。市民のために成すべき仕事に責任と誇りを持って取り組む姿は、本当に素晴らしいと思います。

これからも地域の暮らしに貢献するプロジェクトに関わることで、自分自身の成長も実現していきたいと思います。将来的には、高齢化社会やダイバーシティに対応した、バリアフリーなインフラ整備やシステム構築にも取り組みたいと考えています。
 

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トップページ

 

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空状況照会・予約ページ

※新システムのサイト画面

ステークホルダーの声

 

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アビームコンサルティングは、訪日インバウンド需要による地域振興を目的とした大阪府阪南市の「次世代へつなげ、夢の懸け橋プロジェクト」の支援に取り組みました。官民の連携を軸に、産業観光に特化したファムトリップ※と、台湾へのプロモーションにより、地域のビジネスや雇用の創出と販路開拓に貢献した経緯を、担当者の声を通じてご紹介します。

※ファムトリップ:官公庁や自治体が誘客を目的に海外の旅行事業者やジャーナリスト等を招待し、現地を視察してもらうツアー。

 

優れた地域ブランドの魅力を台湾に向けて発信


阪南市は、その名が示す通り大阪府の最南部に位置しています。
美しい海と山の自然環境に恵まれた街は、高品質なオーガニックコットンの産地であり、今治タオルの原料を供給していることでも知られています。長い伝統を持つ繊維産業や、大阪泉州を代表する水ナスなどの農畜産物をはじめとする多彩な地域ブランドは産業観光の資源として十分な魅力を備えています。


アビームは、訪日インバウンド需要の取り込みにより街に賑わいを取り戻したいという自治体のニーズに応えて、阪南市における地方版総合戦略策定を支援しました。その一環として提案を行ったのが「次世代へつなげ、夢の懸け橋プロジェクト」です。プロジェクトのターゲットには、以前より阪南市と民間ベースで文化交流の実績があった台湾を設定しました。

 

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阪南市特産品の水ナス

 

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地元企業の生産和紙を使用して織られた布製品

 

特色ある産業に的を絞った 「一点突破的」取り組みの展開


阪南市には多くの魅力的な産品や、その背景にある生産設備・生産者が存在しており、阪南市が誇る(他地域に負けない)「強み資源」となっています。
アビームと阪南市は、市内の産業資源を存分に活用した「産業観光」をコンセプトに、インバウンド誘客の増大に向けた「的を絞った戦略的ファムトリップ」を展開しました。

2016年1月に台湾の旅行会社のエージェントを招いて3日間市内を回り、300年続く地酒の蔵元での酒蔵見学・試飲、泉州ねぎの収穫体験や水ナス生産場所の見学、海苔づくりの体験・試食、和紙の繊維で布を織る工場見学、地場で収穫された農産物・魚介類による夕食など、「訪問者が市内の産業を“体感できる”」メニューを提供しました。結果として、阪南市が誇るさまざまな地場産業は、台湾の観光客の方にも「刺さる」ものであり、観光コンテンツとしての大きなポテンシャルが示される結果となりました。

また、実際に各地場企業がビジネス創出等の成果を享受するべく、3月にはファムトリップに参加いただいた地場企業の方々、また市長・商工会事務局長とともに台湾へ渡りました。ここでは、「官民連携による“地域一体”でのトッププロモーション」として、現地企業への商品説明・商談を数多く展開しました。

特に、参加企業が確実に成果を享受できるよう、「単なるPR会、交流会」ではなく、「日台の企業同士が膝を突き合わせて商談する」という点を重視しました。その結果、地域ブランドの品質が高く評価され、台湾での販売や現地メーカーとのコラボなど、多くの商機を獲得できました。

 

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酒蔵見学

 

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海苔づくり体験

 

企業や生産者との関係性が大きな成果を生む

アビームは、人口や経済など地域特性の分析や、課題を打破するための取り組みを含めて、プロジェクト全体の企画を担当しました。ただプランを立てるだけでなく、商品の選択やプロモーションについて、企業や生産者と膝を突き合わせて取り組むのが私たちのスタイルです。

直接のクライアントは自治体ですが、その先の企業や住民の方々のために働くという意識があるからこそ、地域と一体になってプロジェクトを推進できたと思います。中でも、和紙布メーカー、酒蔵、水ナス農家のビジネス創出につながり、プロジェクトで設定した目標の1つ「ビジネス創出件数:3件」を達成したことは、台湾との本格的な経済交流を始めた阪南市にとって、非常に大きな成果です。
こうした成果を継続して獲得するために、2016年2月、日台のビジネス交流推進と地域全体の戦略策定および合意形成を目的とした「日台交流プラットフォーム」を立ち上げました。

さらに、阪南市と台湾の間にある「言葉の壁」を打破すべく、市内に在住している台湾出身の方1名を「台湾向け多言語コンシェルジュ」に任命し、日台の企業をつなぐ窓口機能を強化しています。そうした環境の中で、2016年6月から「次世代へつなげ、夢の懸け橋プロジェクトⅡ」がスタートし、アビームも引き続き阪南市の「パートナー」としてご支援を継続させていただいています。

昨年度のプロジェクトで見えてきた「継承すべきポイント」と「解決すべき課題」に対応することに加え、地場企業や日台交流プラットフォーム、台湾向け多言語コンシェルジュなどの「地域のチカラ」を活かし、3~5年という長いスパンで事業の継続と拡大を実現したいと考えています。

■ 台湾向け多言語コンシェルジュ業務イメージ

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企業や生産者の方々から必要とされることの喜び

私はずっとIT関連の仕事をメインに担当していたため、地域振興、とりわけ海外向け地場産品プロモーションやインバウンド観光誘客に正面から取り組むのは初めての経験でした。しかし、裸一貫で飛び込んだからこそ、企業や生産者の方々が胸襟を開いてくれたのだと思います。

台湾現地プロモーションから戻った次の日に、同行していた農家の方から「大阪府内で台湾のバイヤーと商談会があるので、現地に同行してサポートしてほしい」と頼まれ、支援の延長としてお手伝いしました。地域のみなさんにアビームや私自身が必要とされていることを実感できた瞬間として、今でも心に残っています。
また、台湾からの観光受入環境整備のために、自分で制作した日英中3カ国語表示の案内用サインを3日間かけて市内に設置したのもいい思い出です。

この経験を活かして、他の地域のまちづくり支援にも携わってみたいと考えています。違う環境、違う特性の街で、どんなアプローチができるのか、考えるだけで楽しくなります。
 

ステークホルダーの声

全国から注目される先駆性のある事業へ

産業観光への招待と台湾現地でのプロモーションは、新たなビジネスチャンスにつながり、参加した地元企業も確かな手ごたえを実感することができました。アビームさんが地域特性を十分に理解し、柔軟かつ迅速に要望に応えてくれたことに感謝しています。次世代へつなげ、夢の懸け橋プロジェクトⅡにおいても、早期の目標達成を期待するとともに、全国から注目される先駆性のある事業に育てていただきたいと期待しています。

阪南市長 福山 敏博 様
 

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