企業のGX(グリーントランスフォーメーション)の実現に向けた提言を発表
~脱炭素経営を目指す企業(309社)の現状と課題を明らかに~

アビームコンサルティング株式会社
株式会社日本総合研究所
 

 アビームコンサルティング株式会社(代表取締役社長: 鴨居 達哉、本社: 東京都千代田区、以下: アビームコンサルティング)と株式会社日本総合研究所(代表取締役社長: 谷崎 勝教、本社: 東京都品川区、以下: 日本総研)は、企業のGX※1実現に向けた提言を発表します。

 カーボンニュートラル(脱炭素社会)の実現に向けた動きがグローバルで加速する中、日本国内においても、2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」方針が提示されて以降、再生可能エネルギー電力の調達手段などの脱炭素に向けた事業環境整備が進められています。その一方、エネルギー価格上昇の一因となる将来的なカーボンプライシングの導入や、エネルギー価格の世界的な高騰など、企業を取り巻く市場環境は日々複雑化しています。
 日本総研は、市場環境が急速に変わり続ける中では、政策動向・事業環境変化の注視に加え、事業環境の変化を先取りし、自社の施策に積極的に取り込んでいくプロアクティブな対応が企業に求められるようになると考えています。また、アビームコンサルティングは、企業にとってカーボンニュートラル実現が重要な経営課題の一つになっている一方、具体的な施策は従来の温室効果ガス削減対策が中心となっていることから、経営層と現場の取り組みを戦略的に連携するGXマネジメントの実現が必要だと考えています。

 そこで今回、両社は、包括的な市場環境と企業におけるGX推進の要諦をとりまとめました。
 

■主な本調査結果
 本調査によると、70%以上の企業の経営層が、カーボンニュートラル実現についてコミットメントを表明していました。一方、企業の具体的な行動計画を示す戦略ロードマップ策定に関しては、2050年までのロードマップを策定できていると回答した企業は16%であり、特にサプライチェーンを含めたScope3に関するロードマップについては10%に留まっています(図1)。この結果から、多くの企業において、2050年カーボンニュートラル実現が重要な経営課題と認識される一方で、サプライチェーン全体を含めた温室効果ガス排出量の可視化や、目標達成に向けた具体的な戦略策定が未整備であり、今後早急にアクションが必要な状況にあることが明らかとなりました。

図1

 また、温室効果ガス排出削減対策については、Scope2の削減(再エネ調達)が進展する一方、Scope1、3の対策については、課題が多く検討が困難である状況が明らかになりました。特に、Scope3の削減対策に着手できている企業はわずか30%程度に留まっており、Scope3の削減対策の課題には、「取引先との連携した対策の実施」(46%)や「取引先に対するコスト負担の依頼が難しい」(43%)など、取引先との連携や取引先へのコスト負担依頼が課題として認識されている状況が浮き彫りになりました(図2)。

図2

 さらに、企業経営と統合したGXマネジメント構築の基盤となる、温室効果ガス排出量のデータ管理/報告の仕組みについて、「エネルギー使用量のみ」もしくは「エネルギー使用量+コスト合計値」が73%を占めており、従来の法対応を前提とした対象のみしか管理できていない状況が判明しました。また、将来的なエネルギー価格予測するために必要となるエネルギーコストの明細データ(契約単価、再エネ賦課金、燃料・原料調整費等)まで一元管理している企業は15%に留まっていることも明らかになりました(図3)。

図3

■GX実現に向けたポイント
アビームコンサルティングと日本総研は、企業のGX実現に向けたポイントとして、「カーボンニュートラル実現を目的としたロードマップ策定」「サプライチェーンでの連携したCO2削減対策」「法対応前提のデータ管理からの脱却」「DSF(デマンド・サイド・フレキシビリティ)※2 創出による新たな収益化」を挙げ、企業経営とGXの両立を図るための示唆を導きました。

① カーボンニュートラル実現を目的としたロードマップ策定
GX実現に向けて実施すべきロードマップを策定するために、想定される複数の温室効果ガス削減対策を、投資対効果が高い順序で可視化することが求められます。温室効果ガス削減対策の投資対効果は、調達するエネルギー価格の変動に伴い変動するため、市場環境の変動状況に応じ、温室効果ガス削減対策の投資対効果を継続的に評価し、必要に応じ実施計画の見直しを前提とする柔軟なロードマップ策定が必要になります。

② サプライチェーンでの連携したCO2削減対策
サプライチェーン全体のCO2削減において、企業間の連携やコスト負担が課題になっている一方、サプライチェーンの上流・下流を含めた複数企業間の連携は欠かせません。そこで、連携に向けた取り組みとして、各社が相互にWin-Winとなる温室効果ガス排出量算定スキームおよび削減対策モデルの構築から始めることが有効であると考えられます。

③ 法対応前提のデータ管理からの脱却
温室効果ガス排出量のデータ管理/報告の対象が法対応前提の対象に留まっている実態から、現在の企業のデータ管理体制では、今後の市場変化による影響への対応が困難になっている状況が明らかになりました。GX実現に向けて、エネルギー価格変動予測に基づく最適な温室効果ガス排出削減対策の選定を行うための最初の取り組みとして、コストデータを含めたデータの一元管理が求められます。

④ DSF創出による新たな収益化
今後、企業が企業経営とGXを実現し持続的に成長し続けていくために、新たな収益化を図るビジネスモデル構築の重要性がより一層高まると考えられます。そのために、2050年カーボンニュートラルを、企業経営におけるリスクだけではなくビジネス機会として認識し、デジタルテクノロジーや自社のアセットを活用することが重要になります。

  • ※1 GX
    企業における温室効果ガスの排出源である化石燃料や電力の使用を、再生可能エネルギーや脱炭素燃料に転換することで、社会経済を変革させることを指します。

    ※2 DSF
    アビームコンサルティングでは、需要家の敷地内(ビハインド・ザ・メーター)にある発電機、CHP、蓄電池、電力負荷等の需要家設備を活用し創出されるフレキシビリティとして定義しています。

【本調査概要】
調査名:エネルギー需要家企業のカーボンニュートラル実現に向けた現状・課題調査
調査期間:2021年9月18日(土)~20日(月)
調査方法:Webアンケート(選択+自由記述)
調査対象:省エネ法および温対法の報告対象事業者(309 社) 
調査人数:309名

なお、全ての本調査結果を含むホワイトペーパー全文は、下記リンクよりご確認いただけます。
https://www.abeam.com/jp/ja/topics/insights/wp_gx



■エンドースメント
株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 ディレクタ/プリンパル 段野孝一郎 より
世界的にカーボンニュートラルに向けた取り組みが加速する一方で、トランジションに伴う様々な課題(移行期ゆえのエネルギー需給構造の不安定性、環境・エネルギー政策と事業環境の急激な変化)が顕在化し、企業経営の課題は高度化・複雑化している。今回のホワイトペーパーで示したエネルギー需要家の要件が、トランジションを乗り越える企業経営の舵取りの一助となれば幸いである。
 

アビームコンサルティング株式会社 産業インフラビジネスユニット ダイレクター 山本英夫 より
今後、需要家企業においては、カーボンニュートラル実現に向け社会全体が「移行期」となることを前提としたGX戦略策定および柔軟な見直しを可能とするGXマネジメント体制構築が必要となる。今回のホワイトペーパーによって、多くの企業経営層がGXマネジメント構築の重要性を認識し、リーダーシップを発揮するきっかけになることを期待している。

株式会社日本総合研究所について

日本総合研究所は、シンクタンク・コンサルティング・ITソリューションの3つの機能を有する総合情報サービス企業です。「新たな顧客価値の共創」を基本理念とし、課題の発見、問題解決のための具体的な提案およびその実行支援を行っています。
ITを基盤とする戦略的情報システムの企画・構築、アウトソーシングサービスの提供をはじめ、経営戦略・行政改革等のコンサルティング、内外経済の調査分析・政策提言等の発信、新たな事業の創出を行うインキュベーションなど、多岐にわたる企業活動を展開しています。
ホームページ:https://www.jri.co.jp/

アビームコンサルティング株式会社について

アビームコンサルティングは、アジアを中心とした海外ネットワークを通じ、それぞれの国や地域に即したグローバル・サービスを提供している総合マネジメントコンサルティングファームです。戦略、BPR、IT、組織・人事、アウトソーシングなどの専門知識と、豊富な経験を持つ約 6,500 名のプロフェッショナルを有し、金融、製造、流通、エネルギー、情報通信、パブリックなどの分野を担う企業、組織に対し幅広いコンサルティングサービスを提供しています。アビームコンサルティングは、企業や組織とともに新たな未来を共創し、確かな変革に導く創造的パートナーとして、企業や社会の変革に貢献します。
ホームページ:https://www.abeam.com/jp/

  • ※ アビーム、ABeam及びそのロゴは、アビームコンサルティング株式会社の日本その他の国における登録商標です。
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本件に関するお問い合わせ

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