あらゆるステークホルダーと連携し
サステナビリティ経営を磐石に

【対談】セブン&アイ・ホールディングス 執行役員 釣流まゆみ氏
× アビームコンサルティング 山本英夫氏
(日経ビジネス電子版Special)

あらゆるステークホルダーと連携しサステナビリティ経営を磐石に

2022年6月9日

企業の社会的責任を重視し、サステナブル(持続的)な企業価値向上を目指す経営、すなわちサステナビリティ経営はいかにあるべきか。そのフロントランナーであり、国内最大の店舗ネットワークを擁するセブン&アイグループの釣流まゆみ氏と、新たなコーポレート・スローガン“Build Beyond As One.”を掲げ、ステークホルダーと一体となり価値共創に取り組むアビームコンサルティングの山本英夫氏が語り合った。

 

本業の中に環境施策を取り込みグループ横断で取り組む

山本 セブン&アイグループは、環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」の中で2050年に「CO2排出量実質ゼロ」という目標を掲げておられます。グループにおけるサステナビリティ経営の考え方についてお聞かせください。

釣流 日本の長寿企業は、社会的課題と企業課題を一致させることで成長してきたわけですが、それがまさにサステナビリティ経営だと考えています。お客様の課題解決が小売業の使命ですので、中期経営計画(2021-2025)でも、サステナビリティ経営をベースとした戦略を打ち出しています。これからも、社会的課題の解決と企業の持続的な成長に向けて取り組んでいきます。

山本 それがまさに、御社の経営を持続可能なものにしているポイントだと思います。釣流さんは2019年に現職となられ、サステナビリティ推進部の立ち上げに尽力されました。組織のミッションをお聞かせください。

釣流 サステナビリティ推進部は「環境負荷低減」の柱として、中期経営計画でカーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの推進を掲げています。とはいえ、それを実現するためには、本業の中に環境負荷低減の施策を取り込み、事業会社が先頭に立って進めることが必要です。その意味で、事業会社がサステナビリティ戦略を実行するための仕組みづくりをすることが、私たちの仕事なのです。

 弊社グループの環境宣言ではテーマごとにイノベーションチームを組織し、共通の数値目標を掲げました。課題解決に向け、グループが一体となって取り組むことは非常に重要です。
 

株式会社セブン&アイ・ホールディングス執行役員 釣流 まゆみ氏
アビームコンサルティング株式会社 ダイレクター 産業インフラビジネスユニット 山本 英夫氏

 

情報の一元化なくしてサステナビリティ経営は困難

山本 御社では社長がコミットして体制を整え、ゴール設定を行っておられます。例えば、セブン-イレブンで先行する店舗への太陽光パネルの設置をイトーヨーカドーでも展開されていますが、そこまでグループ横断的に行動する企業は少ない。こうした取り組みを本業に取り込む形で推進されている点が、御社のサステナビリティ経営の強みだと感じます。

 多くの企業のこれまでの対応は、省エネ法対策としての側面が強く、サステナビリティの観点から戦略的に取り組む企業はごく一部です。政府のカーボンニュートラル宣言を受けて2050年をゴールにビジョンを作成したものの、準備不足で五里霧中の企業も少なくない。カーボンプライシングの観点から経営へのインパクトを評価するためには、エネルギー量やCO2排出量のみならず、電力調達の価格まで情報を一元化する必要があります。さもなければ、経営と一体化させた形でサステナビリティに取り組むのは容易ではない、というのが我々の認識です。

釣流 セブン-イレブンでは以前から、店舗ごとにスマートセンサーを入れて電気の使用量の見える化を進めてきました。弊社グループにおけるCO2排出量の95%は電力消費です。このため、本部と店舗の双方で電力の見える化をすすめており、省エネ効果を店舗でも確認できるようになっています。さらなる取り組みに繋がるよう対応を進めています。

 さらに、弊社グループは「省エネ・創エネ・再エネの調達」の3本柱でCO2排出量の削減に取り組んでいます。創エネでは、2030年までに1万1000店の店舗に太陽光設備を導入し、蓄電池の活用も進めます。再エネの調達に関しては、NTTグループ様や北陸電力様と共創して、オフサイト型コーポレートPPA(電力購入契約)による長期的な電力調達も行っています。これは、私たちが再エネ電力の買取契約を20年間担保することで、相手様も安心して設備投資ができるという「Win-Win」の取り組みです。

山本 大変先進的な形だと思います。それとともに、今後の課題となるのは、サプライチェーンも含めたCO2排出量削減への取り組みです。

 今や企業は自社のみならず、サプライヤーなど取引先企業の排出量についても責任を問われ始めています。欧州は先行していますが、日本政府も再エネ普及に向け、グループ企業外からの自己託送による再エネ調達の要件緩和に乗り出しました。この仕組みも活用しつつ、取引先や地域と協働するスキームを作っていくことが重要です。

「サステナビリティ戦略は社会と企業の課題解決が一体とならなければ成り立ちません」

実店舗を持つ強みを生かし「デジタルと人間の融合」を進める

釣流 私たちは「実店舗を持つ強み」を最大限に生かし、店舗を核とした地域のエネルギー循環を作りたいと考えています。再エネ化を円滑に進めるため多くの店舗で、例えば太陽光発電や電力調達に新しい取り組みを採用したり、水素ステーションを導入したりと、チャレンジやテストを進めています。新しい取り組みにちゅうちょなくトライしていくことが重要となります。

山本 まさにそのための仕組みがデジタル技術です。データの一元管理だけでなく、IoTやAIの技術で店舗の空調などを最適に制御することもできます。今後は再エネの拡大で市場の整備が進み、デジタルを活用して、電力システム側に価値を提供することも可能になるでしょう。

釣流 小売業界では人材流動化が進み、先進技術に対するリテラシーも十分とは言えません。となると、鍵を握るのは、「デジタルと人間の融合をいかに進めていくか」ということです。人としてお客様に対応しつつ、見えない部分は新技術に任せていく。社外からの新しい考え方、豊富な知見に触れながら、サステナビリティ経営を盤石なものにしていきたいと考えます。

山本 お客様とステークホルダー全員が一体となって目指すゴールに向けて取り組めますよう、我々も伴走し、役割を果たしていきたいと思います。本日はありがとうございました。
 

  • ※日経BPの許可により「日経ビジネス電子版」に掲載された広告から抜粋したものです。禁無断転載©日経BP

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