ユニークな進化・普及を遂げる
日本のデジタルレイバーが描く未来

※本稿は、アビームコンサルティングの「いま」をお伝えする広報誌『ABeam』2018-19年度版から一部記事を抜粋した内容です。

安部 慶喜

働き方改革が進む日系企業において、RPA活用が急速に進んでいる。そのスピードと多 様性は、海外からも注目を集めるほど目覚ましいものがある。日本はデジタルレイバーに よって、労働人口の減少というピンチをチャンスに変えられるのか。ますます注目を集め るRPAとそれを取り巻く状況、有効活用のために重要なポイント、今後の展望について、 アビームコンサルティングの安部慶喜が語る。

安部 慶喜
戦略ビジネスユニット
執行役員 プリンシパル

大企業の8割がRPAツールを導入

デジタルレイバーを支えているRPA(Robotic Process Automation)の導入は、2017年から18年にかけて、加速度を増しています。すでに大企業の8割が何らかのRPAツールを導入しており、17年下期からのトライアル期間を経て、18年は本格展開のフェーズへと移行している状況です。

この動きは、中小企業へも広がっており、18年6月にRPA BANKが会員に対して行ったRPA利用実態調査の結果によると、従業員数が300~1,000人未満の企業では未導入・トライアル・本格展開がそれぞれ約1/3の割合を占めており、300人未満の企業では未導入が約半数、トライアルが約3割、本格展開が約2割と、企業規模に比例してRPA活用が進んでいる実態が見えてきました。

このように大企業がリードする形で活用が進むRPAですが、一部署で本格展開が完了してから全社に波及するまでには数年に及ぶ期間を要しますが、今後社内でRPAの普及が進めば進むほど、その効果も拡大していくといえるでしょう。

現在、一般的に普及しているのは、RPA化の中でも最も単純な、PC上のルール化された定型業務を自動化する「Stage1 Basic」ですが、RPAと紙や画像などの認識技術を組み合わせた「Stage2 Cognitive」のステージに進んでいる企業も出てきています。

中には、さらにその先のRPAとAIによって例外対応を含めた非定型業務の自動化を目指す「Stage3Intelligence」へと足を踏み入れている先進企業もあります。

こうしてRPAの活用領域が広がるにつれて、RPAを導入する対象部署や業務が広がっており、社内のあらゆるデジタルレイバーが連携した、一つの大きな業務処理基盤としての「デジタル・レイバー・プラットフォーム」が姿を現そうとしています。

独自の発達で欧米を凌駕 日本のRPA活用の現状

もともと欧米に起源を持つRPAは、約1年遅れで日本に輸入されました。しかし、昨今の日本における働き方改革ブームが追い風となって加速的に進化し、比較的単純な作業が多い欧米のRPAに比べて日本のRPAの活用事例は、一部で決裁権を持つなど、非常に高度な作業をさせるまでになっています。

欧米企業がRPAに注目したのは、シェアード ・サービス・センターやコールセンターといった職能別組織における事務・オペレーション業務を置き換え、コスト削減を図ろうというものでした。そうした定型業務においてRPAが最も高い能力を発揮するのは確かですが、事業部制の組織が多い日系企業では、事務・オペレーションが明確な定型業務として、分離されているわけではありません。

その特性から日本のRPA活用は、特定の部署における単純な定型業務をカバーするだけでなく、企画に入る前の事前調査や予実管理・データ分析といった非定型業務へも対応する特異な進化を遂げたのだと思います。今や、RPA を活用している業務範囲は、日本が世界で一番広く、「RPA先進国」と言える状況になっており、海外からの問い合わせも少なくありません。

この潮流は、アジアに進出している日系企業の現地法人でも現れ始めており、まだほとんどRPA導入が進んでいないアジアの現地企業にも、今後波及していくことが予測されます。

このように活用の幅が広がる一方で、RPA ツールも、日々進化を遂げています。以前はツールごとに得手・不得手があったものの、RPAが操作できるツールや、読み取れるデータの種類はどんどん拡張していますし、ワークフロー機能を取り入れて承認プロセスを一元化することで、ロボットと人間のボーダーレス化に向けて、各ツールベンダーによる開発が進められています。

しかし、RPA ツールそのものの機能拡張は、さほど重要ではないと私は考えています。むしろ、これから生まれる新しいツールとも容易に連携できる仕組みをつくることが大切です。加えて、RPA ツールは企業のユーザーさんが自ら触って利用するものですから、導入や運用の助けとなるマニュアルやトレーニングの整備、困ったときに頼れる支援体制の強化も欠かせません。この部分でも、ツールベンダーと一丸となってサポートしていかなければなりません。

「サーバー型」RPAの「直下型」導入が成功に導く

かつて類を見ないほど急速に普及しているデジタルレイバーですが、実はデスクトップ型のRDA(Robotic Desktop Automation)とサーバー型のRPAの2種類に大別することができます。

RDAはその名の通り、担当者個人のデスクトップにインストールするものです。現場主導でRPA化を迅速に進められる利点はあるものの、誰がどこに何を入れたのか把握できなくなるデメリットがあります。

また、「全社でRPAを本格導入するタイミングになって全てツールを入れ直す事態に陥り、大きな手戻りが発生した」という声をよく耳にします。

RPAには各所で転用できる共通のノウハウが数多くありますので、現場で分散的に始めるのではなく、全社横断型のプロジェクト推進室を立てて、経営層を巻き込んだ「直下型」で、業務改革とともに導入するのが理想の進め方です。

労働人口の減少という大きな壁に直面している今の日本。人を採用して育てている猶予はもはやありません。RPAによって今いる優秀な人材の労働力を解放し、新たな事業へ振り向けていくことが、企業の成長へとつながるのです。

執筆者

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