ABeam DX Insight 第15回

DXエンジン
~DX人材ポートフォリオマネジメントの3要素~

2021年7月29日

菅田 一基

戦略ビジネスユニット
執行役員 プリンシパル

 

DX組織に期待される項目として、ビジネスのデジタル化に対応するために、人材の育成・獲得が挙げられるケースは多い。既に社会的な課題としても認識されているDX人材の不足を解決するために、いかに自社に必要なリソースを育成・獲得していくかは、もはや経営課題といっても過言ではないだろう。

DX人材の育成・獲得に対する期待に応えるためには、DX組織の機能として、全社最適の視点からDX人材ポートフォリオマネジメントの仕組みを整備していくことが重要である。管理する仕組み自体は存在している企業も少なくないが、実態的には機能していないケースが多い。例えば、DX組織を設立しソフトウェアエンジニア、デジタル技術者などを所属させているが、実際にアサインされる案件は特定事業部門のプロジェクトに限定され、閑散期においてもクライアントとのリレーションなどに過度に配慮する結果、全体として非効率な配置に陥っている状況も多い。また、個別最適なアサインが優先されることによって、中長期的な視点からのあるべきDX人材ポートフォリオ形成や管理が実現できないリスクも出てくる。このような事情からDX組織に対して、全社最適な視点からのリソースマネジメントが求められている。

DX人材ポートフォリオマネジメントは、以下のように、「DX戦略に基づくDX人材ポートフォリオ定義」「DX人材育成とアサインメントの最適化」「即効性のあるDXリソース体制構築」の3つのパートに分けて考えていく。

図1 DX人材ポートフォリオマネジメントの3要素

図1 DX人材ポートフォリオマネジメントの3要素

「DX戦略に基づくDX人材ポートフォリオ定義」
(現状の見える化)
まず、自社の現状を把握するが、その際には、前段で述べたような個別最適から生じる非効率化配置などの状況を分析し、実態面での課題を把握しておくことも重要となる。

(人材定義)
次に、DX戦略に基づいて、中長期的にどのようなケイパビリティを持った人材が何人規模で必要となるのかを明らかにする。DX戦略の検討の中で、詳細まで踏み込んだ具体化が期待されるポイントである。
 

「DX人材育成とアサインメントの最適化」
(需給管理)
事業部やプロジェクトなどのDX人材の需要サイドからのリクエストを精度高く把握すると同時に、供給サイドとなるリソースの現状も詳細に把握することが必要となる。双方ともにタイムリーな情報の更新が重要となる。

(マッチング・最適化)
中長期的なDX人材ポートフォリオ実現の観点から、DX人材の個別の育成状況と、需要サイドの要件とのマッチングを行う。加えて、定期的にPDCAを回すことで中長期目標に対する予実管理を徹底し必要なアクションを実行していく。
 

「即効性のあるDXリソース体制構築」
スピーディーな対応が求められるDXにおいては、短期的にも必要なDXリソースを獲得することが不可欠となる。以下に例示するように、必要人材の内容と量に応じて打ち手を検討することとなる。

図2 DXリソース体制オプション

図2 DXリソース体制オプション

DXへの取り組みに対する期待が一層向上し、具体的な成果創出が求められるようになる中、DX人材への取り組みの重要性は一段と増している。短期的な人材の確保を狙ったJV設立の事例も多くなってきているが、過度に外部に依存する状況を避けるためにも、上記の3要素をバランスよく検討しておくことが重要だろう。DX人材ポートフォリオマネジメントの仕組みをDX組織機能のコアの一つと位置付けて強化することが必要ではないだろうか。

ABeam DX Insight

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