ABeam DX Insight 第5回

DXビジョン、シナリオ策定
~「DX×パーパス経営」の5つの効用とは~


菅田 一基

戦略ビジネスユニット
執行役員 プリンシパル

 

COVID-19の影響でオンライン化が急速に進み、事業活動を行ううえで様々な不可逆な変化が発生する中、自社の存在意義の再定義を迫られている企業は少なくない。これらを背景として、パーパス経営を意識した取り組みを行う企業が多くなっている。

パーパスとは「自分たちの存在意義」を指す。パーパス経営では、業界内の競争力強化だけではなく、自社の固有の社会的価値を定義し、社会における新たなポジションの確立を目指していく。

まず、自社のパーパスを定義するには、「過去を振り返り自社の原点に立ち戻るアプローチ」と「将来を見据えて自社の果たすべき役割を構想するアプローチ」の2つがある。これまで積み上げてきた自社の歴史の中で、社会に果たしてきた役割を振り返りながら、直近始まった大きな環境変化での新しい存在意義をパーパスとして定義することになる。

DXのあり方自体も、このパーパス経営の概念に基づいて考えることで、視点が変化する。以下の図のように、これまでの「テクノロジー起点・生産性向上」という視点から、「新たな社会価値創造によるパーパスの実現に向けた取り組み」へと進化を遂げるだろう。

図 DXのあり方の変化

図 DXのあり方の変化

パーパス経営とDXを掛け合わせることで、以下のような相乗効果が期待され、より一層取り組みの注目度が上がっていくだろう。

1.DX戦略の大胆な方向転換が可能になる
大胆な方向展開においては、なぜそれが必要なのかを問い直す必要が出てくるが、パーパスに基づき高い視点から検討することで、戦う場所の転換や提供価値の進化を可能にする。

2.競争力の考え方が進化する
競争力について業界内の相対的優位性の強化ではなく、社会における固有の存在となることを通じて自社のポジションを強化するアプローチへ進化する。

3.デジタルイニシアティブの集約・選別の指針となる
特定部門だけの組織や、小規模のイニシアティブが乱立する等の状況に陥りがちだが、パーパスという指針が定義されることによって、イニシアティブの集約・選別が可能になる。

4.価値変化に対応したデジタルによる経営管理が高度化する
パーパス経営によってESG、人的資本等の非財務指標にもより目が向けられるようになる中、デジタルを活用することでそれらの見える化が可能になり、経営管理の高度化に貢献できる。

5.社内外のステークホルダーを引きつける引力となる
顧客へのブランディングに加えて、パーパスを軸にして従業員の一体感の醸成や、外部の優秀なデジタル人材・パートナーを引きつける誘因の付加、投資家からの長期的な期待値に応えることにつながる。


パーパス経営とDX戦略を掛け合わせることで、新たな自社の存在意義とそこまでの道程を導き出すことが可能になる。これまで日本企業では暗黙に社内で合意があるとされていた部分も多かったが、これからの経営においては意識的にパーパスを取り込み、経営の中核に位置づけることが必要になるだろう。


 

ABeam DX Insight

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