高砂熱学工業株式会社

高砂熱学工業株式会社

Customer Profile

会社名 高砂熱学工業株式会社
所在地 東京都新宿区新宿6-27-30
設立 1923年11月
事業内容 ビル、商業施設、工場などの空調設備を中心としたエンジニアリング事業
資本金 131億3,400万円

※会社名、肩書き、役職等は取材時のものです。

DX推進基盤として基幹システムの全面刷新を実現
中心となる工事領域をOutSystems活用による
Enterprise Agile開発で実現

空調工事大手の高砂熱学工業株式会社。同社は40年にわたり使い続けてきた基幹システムの全面刷新を計画。工事領域は高速開発ツールOutSystemsによるEnterprise Agile開発、会計・人事領域はSAPの標準機能活用と、分けて構築することにした。プロジェクトはアビームをパートナーに、期間は約3年、最大300名以上が関与した大規模なものであったが、計画通りの2022年4月に全面稼働した。同社では新しい基幹システムをDX推進基盤としてフル活用し、「環境クリエイター」へと自らを進化させていく考えだ。

高砂熱学工業株式会社

プロジェクト概要

導入前の課題

  • 40年にわたり使い続け、限界に達していた基幹システムの刷新
  • 経営環境の変化や新事業創出に柔軟に対応できない状態の解消

ABeam Solution

  • OutSystems活用によるEnterprise Agile開発
  • SAP、ミドル系ソリューションも含めた広範な大規模プロジェクトの運営

導入後の効果

  • DX 推進基盤として、ペーパーレス化、業務のリモートワーク化を実現
  • 業務アプリケーション高度化による業務負荷軽減や管理業務集中化に寄与
  • IT 基盤として、経営環境の変化やリスクへの対応力の向上を達成

Story

古谷 元一氏

業務プロセスを確定していく中で迷いが出たときには、客観的な視点から、アビームが最適解を提案してくれました。いつも心強い味方でいてくれました

 

高砂熱学工業株式会社
執行役員
DX推進本部長
古谷 元一氏

Story

プロジェクトの背景

長年使い続けてきたホストによる基幹システムの全面刷新を計画

 高砂熱学工業株式会社(以下、高砂熱学)は、商業施設やオフィスビル、工場などの空調システムの設計・施工を手がける1923年設立の会社である。同社は「人の和と創意で社会に貢献」を社是に、空調設備を中心とする技術力やノウハウ、実績を蓄積し、空間創りのパイオニアとして、最高の品質提供と創意工夫による技術開発、そしてそれを可能とする人財の育成を進めてきた。

 2023年11月に創立100周年を迎える高砂熱学は、さらにサステナブルな成長を果たすべく、環境クリエイターとしての事業展開を推進している。その第一歩として2022年にはカーボンニュートラル事業開発部を設立した。

 高砂熱学では40年ほど前に基幹システムをホストコンピューターで構築し、長年にわたり運用してきた。
「旧基幹システムは、先達がしっかりとした設計に基づいて開発を行ったものでした。そのため、システムとしての質は非常に高く、長期にわたって使い続けることができたのですが、メンテナンスができる技術者が減ってきており、このままでは法改正などの対応やシステムの運用が困難になるかもしれないという状況が生まれていました」と高砂熱学工業株式会社 執行役員 DX推進本部長 古谷 元一氏は語る。

 加えて、ホストは業務に合わせて作り込まれているので、高い安定性を維持していたものの、経営環境の変化と新たな事業の方向性に対応しにくいことも大きな課題になっていた。例えば、空調設備工事以外の事業を展開しようとした時には、様々なクラウドサービスとの連携が必要になる。対応していくには、クラウドをベースにした新しい基幹システムの構築が欠かせない。そこで高砂熱学では、基幹システムをクラウドベースのものに全面的に刷新することを決めた。

Story

アビームの選定理由

決め手はOutSystems活用によるEnterprise Agile開発が可能という提案

 高砂熱学では、基幹システムの刷新に当たり、メインとなる工事領域は業務にシステムを合わせる形で大規模なスクラッチ開発を行い、会計・人事領域はシステムに業務を合わせて、SAPのパッケージ標準機能を有効活用し、両方を疎結合で連携させる方針とした。

 高砂熱学では、以前から基幹システムのロジックをブラックボックスにせずに、情報システム部がきちんと内容を把握することを重視してきた。そして20年以上前から統合CASEツールを使って、情報システム部による基幹システムの自社開発を続けてきた。そういった実績もあり、今回の刷新でも構築するシステムの姿とロジックを、情報システム部が主体的に構想していき、基本方針を定めることにした。「工事領域の開発は高速開発ツールによるスクラッチ開発で進めることにし、複数のツールを評価した結果、 OutSystemsを採用することにしました。さらに画面設計などを洗い出し、200ページ以上に及ぶRFPを作成、5社に提案を求めました」と高砂熱学工業株式会社 DX推進本部 情報システム部 基幹システム開発室長 高橋 大典氏は説明する。

 コンペの中で、アビームともう1社が今回のような大規模な基幹システムの構築が可能だと回答し、最終的にアビームを選んだ。アビームに決めた理由は、プロジェクトの中心となる工事領域の開発は、OutSystemsによるEnterprise Agile開発(反復アプローチを適用し、段階的にリスクを軽減し品質を作りこみつつ、並行する業務変革に合わせ優先度が高い要件を取込みながら進めていく手法)が可能だとアビームが明言したことだった。加えて、業務プロセスへの知見が高く、RFPの内容を深く理解した上で、提案書を作成してきたことも高く評価した。「提案書がよくできていて、感動を覚えたくらいです。RFPをしっかりと読み込んでいることがうかがえましたし、プロジェクトへの熱意も感じました。アビームと一緒にやれば成功すると確信しました」(高橋氏)。

 

高橋 大典氏

アビームのチームビルディング、人財育成のスタイルなども非常に参考になりました。これから力を入れていくDX人財育成での支援にも期待しています

 

高砂熱学工業株式会社
DX推進本部
情報システム部
基幹システム開発室長
高橋 大典氏

Story

プロジェクトの目標・課題と解決策

開発初期から改善策を講じることで、生産性と開発品質の向上を達成

 プロジェクトはIT基盤全般の見直しと刷新を行う非常に大規模なもので、期間は約3年、関与者は最大300名以上に及ぶ。ポイントとなる工事領域の開発は開発規模が大きく、高いリスクがあるため、要件や仕様の認識の齟齬を早期に発見・解消することが重要になる。そのため、ウォーターフォール型開発ではなく、Enterprise Agile開発を採用し、高品質・高生産性の確保を目指した。「ウォーターフォール型の開発では、最後のテストフェーズになった段階で大きな手戻りが発生して、本稼働が先延ばしになる可能性があります。私たちにとっても初めての経験でしたので、大きなチャレンジとなりましたが、Enterprise Agile開発であればリスクを回避しながら、完成形に確実に近づけていけるので、計画通り約3年間で稼働させることができると考えました」(古谷氏)。

 「OutSystemsを利用したことで、言語やコーディングのような学習コストの高い知識の習得に時間をかけることなく、われわれの業務プロセスを理解してもらったり、そのシステム化の方法を議論したりといった本質的な部分に、より多くのリソースを割くことができました。今回、アビーム側は入社したての若手社員もプロジェクトに加わりましたが、OutSystemsを初めて使ったにもかかわらず、わずか2カ月程度で大きく成長し、第一線で活躍できるレベルの設計・開発者になりました。アビーム社員の能力が高いこともあるとは思いますが、ツールとしてベストな選択だったと思います」(高橋氏)。

 反復アプローチとして、開発初期からシナリオ検証を実施して、速やかに認識違いを解消し、次の機能開発に反映させていく。しかし、今回のように画面だけでも500以上に上る大規模開発で、かつ300人以上のメンバーが関与している開発現場では、モデルとして考えたようなスムーズな連携を行うことは現実的に難しい。実際、開発当初は変更要望がうまく伝わらなかったことや、変更によってシステム不整合が発生するなど様々な問題が発生した。そこで開発期間中に振り返り期間を設けて集中的に取り組むことで、問題解決に努めた。そういったことを繰り返していく内に、メンバー間の連携を確立することができ、プロジェクトを安定的かつ確実に進めることが可能になった。「初期の段階ではつまずきもありましたが、そこで講じた改善策が後の工程で生きてきました。効率がどんどん上がっていき、品質も改善する方向に進んでいきました」(古谷氏)。

 大規模プロジェクトのため、全体の進捗だけでなく、ユーザー部門と工事、会計、人事など分野ごとに会議体制を設け、管理を行った。アプリケーションも会計・人事のSAP、工事領域でのEnterprise Agile開発、DX推進基盤としてのワークフローやデータ連携基盤、ID管理、クラウドフォルダなどのミドル系ソリューションの3つの領域があり、バランスを取りながら一体的にプロジェクトを進める必要があった。「工程表は非常に複雑になり、すべてを図式化することは不可能でした。しかし、図表に表せない部分も含めて、アビームが全体を把握し、ポイントを押さえた形でプロジェクトを運営したことで、計画通り開発を進めることができました」(高橋氏)。
 

Enterprise Agile開発イメージ

Enterprise Agile開発イメージ

Story

導入効果と今後の展望

DX推進基盤として、環境クリエイターへの進化を後押し

 プロジェクトは、2019年8月のプロジェクト開始から約3年間で、8段階の切り替えを経て、計画通りの2022年4月に基幹システム全体を稼働させた。これによって、業務アプリケーションの高度化にとどまらず、ペーパーレス化、業務のリモートワーク化の推進が可能になり、また、情報セキュリティーレベルも大幅に向上した。一方、旧システムにはなかった機能も実装されたので、ユーザー部門がうまく使いこなせるような取り組みを行っていくとともに、OutSystemsを活用した改善活動も本格化させる。「本番稼働して間もないですが、ユーザー部門からの要望事項で、システム化した方がよいと判断したケースは、OutSystemsを使って即座に対応しています。今後は、システム開発を内製化し、継続的にユーザー部門の要望を迅速にシステムに反映する流れを作っていきます」(高橋氏)。

 高砂熱学では「すべては環境クリエイターへ進化するために」を掲げたDX戦略を打ち出している。その中の重要テーマの1つが今回の基幹システム刷新で、これからまずは管理系業務を集約していく計画だ。その上で、中長期的には、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ツールと基幹システムの連携を図っていく考えだ。BIMからのデータを基幹システムに取り込み、原価管理や発注、請求が自動で行えるような形にしていく。加えて、脱炭素を軸に事業を展開していく上ではEMS(エネルギー・マネジメント・システム)との連携が重要になり、基幹システムは提供する新しいサービスの土台になる。これらの取り組みを通して、高砂熱学は基幹システムをDX推進基盤としてフルに活用し、環境クリエイターへと進化していく考えだ。

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