株式会社東京きらぼしフィナンシャルグループ

株式会社東京きらぼしフィナンシャルグループ

Customer Profile

会社名 株式会社東京きらぼしフィナンシャルグループ
所在地 東京都港区南青山三丁目10番43号
設立 2014年10月1日
事業内容 ①銀行、その他銀行法により子会社とすることができる会社の経営管理
②その他前号の業務に付帯関連する一切の業務
資本金 275億円

※会社名、肩書き、役職等は取材時のものです。

地方銀行「初」の3行合併と基幹システムを含む全ての銀行システム統合プロジェクトを完遂
安定的な移行を実現し、DXへの一歩を踏み出す

東京きらぼしフィナンシャルグループは、2016年4月頃から東京都民銀行、八千代銀行、新銀行東京の合併と、それに伴う3行の基幹システムを含む全ての銀行システムを統合するプロジェクトを本格的に開始した。同グループはアビームコンサルティングをパートナーに選び、アビームコンサルティングはPMOとして、4年にもおよぶ難易度の高いプロジェクトを推進した。システム統合は2020年5月に計画通り完了、安定的な移行を実現した。東京きらぼしフィナンシャルグループではシステム統合によるコスト削減などで大きな効果を生み出すとともに、デジタルバンク設立を契機としたデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みを加速させようとしている。

 

2021年6月8日に日経コンピュータ主催「IT Japan Award 2021」の特別賞を受賞しました。詳細は以下をご覧ください。

当社が支援した株式会社きらぼし銀行様の基幹系システム統合プロジェクトが「IT Japan Award 2021」特別賞を受賞

プロジェクト概要

導入前の課題

  • 経営基盤の強化と経営の効率化による組織の強化
  • 地方銀行として初の3行合併とそれに伴う銀行基幹システムを含む全システムの統合
  • 一体的な金融サービスの提供と企業文化の創出

ABeam Solution

  • 経営統合(PMI)支援
  • 豊富な業界・業務・テクノロジーへの知見
  • プロジェクトを完遂するチームワーク

導入後の効果

  • 年間約100億円、約20%のコスト削減
  • グループとしての一体的な企業文化の醸成
  • デジタルバンクをはじめとしたDXへの取り組みの加速

Story

味岡 桂三 氏

悩んだときや考えを巡らせたとき、アビームコンサルティングにはテニスの壁打ちの“壁”になってもらいました。率直なアドバイスを受けることができて、感謝しています

 

東京きらぼしフィナンシャルグループ
取締役会長
味岡 桂三 氏

Story

プロジェクトの背景

一体的な金融サービス提供のために不可欠な銀行システム統合

 東京きらぼしフィナンシャルグループは、2014年10月に東京都民銀行と八千代銀行の経営統合により、東京TYフィナンシャルグループとして誕生した地方銀行グループの金融持株会社である。その後、2016年4月に新銀行東京が参加、2018年5月に地方銀行として初の3行合併によってきらぼし銀行が発足した。同時に東京TYフィナンシャルグループは、現在の商号に変更した。

 同グループは首都圏における中小企業と個人のお客さまのための金融グループとして、「地域No.1の都市型地銀グループ」というビジョンの下、「金融にも強い総合サービス業」を目指し、銀行業を中心に様々な金融サービスを展開している。

 東京きらぼしフィナンシャルグループでは経営基盤の強化と経営の効率化の2つを目標に、経営統合と合併を進めてきた。そこには銀行は規模の論理が働くのに加えて、3行の特徴を組み合わせることでより成長が見込めるといった判断があった。「東京都民銀行は医療福祉関係、八千代銀行は不動産関係、新銀行東京は信託銀行業務および東京都との密接な関係など、それぞれに強い分野、特徴がありました。合併することで組織としてより強固なものができると考えたのです。加えて、経営の効率化は近隣店舗の集約や、本部を中心とする人員をスリム化し、持株会社の経営統合から合併につなげ、基幹システムを含む全ての銀行システムを統合することで、統合効果を最大限に発揮できると見込みました」と東京きらぼしフィナンシャルグループ 取締役会長 味岡桂三氏は語る。

 一方で、3行は設立の経緯や活動スタイルも異なるため、それぞれの考え方がシステムに反映されていた。きらぼし銀行が一体的に金融サービスを展開する上で、システムの統合は欠かすことができない重要課題だった。

図 東京きらぼしフィナンシャルグループの中期経営計画概要

図 東京きらぼしフィナンシャルグループの中期経営計画概要

東京きらぼしフィナンシャルグループは、現中計(2018年5月~2021年3月)において、「金融にも強い総合サービス業」を標榜し、経営統合プロジェクトと並行する形で様々な施策を積極的に展開。2020年8月17日には「きらぼしライフデザイン証券」を開業

Story

アビームコンサルティングの選定理由

豊富な実績を評価、長期プロジェクトでのPMOとしての能力に期待

 2016年4月、東京TYフィナンシャルグループと新銀行東京が経営統合した段階では、基幹システムは東京都民銀行の「STELLA CUBE®(NTTデータ)」、新銀行東京の自営システム(日立製作所)、八千代銀行の「BankingWeb21(NEC)」の3つが併存する形で稼働していた。そこで、同グループは3行の合併と3つの異なる基幹システムの統合を前提とする統合プロジェクトをスタートするにあたり、それを支援するコンサルティングファームを選ぶことにした。

 同グループがパートナーとして白羽の矢を立てたのがアビームコンサルティングだった。「持株会社を作る、銀行を合併させる、といった私たちより先行して統合を行ってきた他行に話を聞きに行きました。その際にある銀行から話を伺うことがあったのが、経営統合プロジェクトに多くの実績を持つアビームコンサルティングでした。
その上で、実際にアビームコンサルティングのコンサルタントに会ってみると、業界知見はもちろん、明るくて真摯な方でした。これなら長期プロジェクトを一緒に進められそうだという好印象を受けました。やはり相性は大切です。それでアビームコンサルティングに決めました」ときらぼし銀行 常務取締役 三浦毅氏は振り返る。

 プロジェクト開始の段階で、最も頭を悩ませたのが統合スケジュールの立案だった。メガバンクでもシステム統合過程でシステム障害を発生させたケースもある。顧客に迷惑がかからないよう、システム障害を起こさず、できる限り短期間で確実に統合を実現させなければならなかった。そこで、まずDay0として、重複支店名・番号の解消のため2017年10月までに八千代銀行の支店番号を中心に3行の重複支店名・番号を変更し、次に2018年5月のDay1として、3行合併を行い、同時に新銀行東京の基幹システムを東京都民銀行の基幹システムに統合するとともに八千代銀行の基幹システムとはリレーシステムで接続。その上で、2020年5月のDay2として、併存していた東京都民銀行と八千代銀行の基幹システムを東京都民銀行側に統合するという計画を立てた。

 基幹システムだけでなく、サブシステムも統合する必要があり、プロジェクトは4年間という長期にわたる。そのため、ベンダー企業や協力会社のSEを含めて、多数のプロジェクトメンバーが関わることから、モチベーションの維持や情報の共有が大きな課題だった。

図 経営統合プロジェクト全体スケジュール

図 経営統合プロジェクト全体スケジュール

Story

プロジェクトの目標と推進する上での課題、解決策

Day1でのシステム障害を教訓に、再発防止を至上命題に移行を目指す

 プロジェクトは、3行の合併やそれに伴う3行のシステム統合を実現するという、非常に難易度の高いものだった。特に、2018年5月のDay1で統合当日に基幹システムに障害が発生。顧客のキャッシュカードが使えない、振り込みの入金が遅延する、ATMから一部の口座へ振り込めないなどの顧客に多大な影響を与える事態が生じた。その苦い経験を踏まえ、Day2に向けては、再発防止を至上命題にプロジェクトの推進体制に最も注意を払った。「プロジェクトでは想定していなかった様々なことが起きます。それがプロジェクト全体に波及すると、あちこちでハレーションが起きるので、担当役員はどんなことが起きても動じないように構えることを心掛けました。
またSEをはじめ、たくさんの人が関わる中で、共通認識を持てるように、銀行や多くのベンダー企業などとの横の関係、また、役員と現場の縦の連携がベンダー企業も含めてスムーズに行くように気を配りました」と東京きらぼしフィナンシャルグループ 代表取締役副社長 北川嘉一氏は説明する。

 こうした体制を整えたこともあり、Day2に向けて、プロジェクトは順調に進み、2020年3月末までにはほぼ作業を終えていた。そのときに直面したのが、新型コロナウイルスの感染拡大というかつてない事態だった。「感染が拡大し、緊急事態宣言が発令される可能性が高まっていた3月27日の取締役会で、5月に予定通り移行するか、それとも繰り延べするかの判断をしなければなりませんでした。過去に経験のない状況での経営判断でしたが、全員一致で移行を決めました。そして残り1カ月、覚悟を持って取り組むことにしましたが、一生忘れられない日になりました」(味岡氏)。

 プロジェクトは感染拡大防止のため、関係者全てを2つのチームに分けて、交互に在宅勤務にした。ベンダー企業も同じようにチームを分け、万一感染者が出てもプロジェクトを進められるようにした。その結果、1人の感染者を出すこともなく、5月6日のシステム移行日を迎えることができた。

 4年間の経営統合プロジェクトで、アビームコンサルティングはPMOとして、システム開発担当のベンダー企業や協力会社を横断的に管理する役割も担った。東京きらぼしフィナンシャルグループにはPMOを担当できる行員が不足していたため、アビームコンサルティングがそのサポート役を務め、長いプロジェクトの中で同グループの企業文化や業務の進め方を吸収していった。東京きらぼしフィナンシャルグループ側でもアビームコンサルティングとの共同作業の中でPMOに必要なスキルや経験、理解を深めていった。「2018年の東京きらぼしフィナンシャルグループ並びにきらぼし銀行誕生後に同グループ内に設けられたシステム統合準備室では、行員とアビームコンサルティングのコンサルタントが一緒に机を並べ業務を行っていましたが、行員とかコンサルタントとかの垣根がまったくなく、同じ目的に向かって一緒に働くことができていました」(三浦氏)。このように両社のメンバーが一体となって、プロジェクトを進めたことが計画通りの移行を可能にする大きな原動力になった。

 加えて、アビームコンサルティングは東京きらぼしフィナンシャルグループへのアドバイス役としての役割も果たした。「プロジェクトの最終責任者として悩み、考えを巡らせました。そこでの問題意識や考えをアビームコンサルティングのコンサルタントに話して、直接アドバイスをいただきました。いわゆる、テニスの壁打ちの“壁”になってもらったわけです。間違っているときは間違っていると直言してもらえたことで、プロジェクトを迷わず進めることができました」(味岡氏)。

 

北川 嘉一 氏

統合プロジェクトをやり遂げたことは行員の大きな自信になっています。
今たくさんのプロジェクトに取り組んでいますが、アビームコンサルティングから学んだPMOのやり方が役立っています

東京きらぼしフィナンシャルグループ
代表取締役副社長
きらぼし銀行
代表取締役会長
北川 嘉一 氏

渡邊 壽信 氏

アビームコンサルティングには第3者の専門家としてのアドバイスを期待しています。
デジタルバンクにとどまらないデジタル戦略に挑戦していくので、知見の提供をお願いします

東京きらぼしフィナンシャルグループ
代表取締役社長
きらぼし銀行
頭取
渡邊 壽信 氏

三浦 毅 氏

これまでアビームコンサルティングと一体になって、きらぼし銀行を作り上げてきました。
これからのDXの取り組みでも、今までのような率直な提言をしてほしいと思います

きらぼし銀行
常務取締役
三浦 毅 氏

Story

導入効果と今後の展望

戦略的子会社をプラットフォームに、金融にも強い総合サービス業を目指す

 2020年5月6日、きらぼし銀行の統合後の基幹システムは計画通り稼働し、現在まで大きなシステム障害を起こすことなく順調に運用されている。その中で合併に伴う店舗統合やシステム統合などの効果は着実に表れており、2022年度では経費が合併前に比べて年間約100億円、約20%削減される見込みだ。一方で、東京きらぼしフィナンシャルグループでは、システム統合プロジェクトと並行して、地方銀行では最大規模となる、きらぼしコンサルティング、顧客企業の財務基盤強化を支援する、きらぼしキャピタル、フィンテックビジネスの強化を目指す、きらぼしテック、顧客本位の資産運用サービスを実現する、きらぼしライフデザイン証券という戦略的子会社を矢継ぎ早に設立してきた。

 3行合併とそれに伴う3行システム統合プロジェクトは4年以上の歳月と約200億円の費用がかかり、その間、新しいサービスを開発・提供することは難しかった。しかし、システム統合プロジェクトが完了したことで、東京きらぼしフィナンシャルグループでは金融サービスをデジタル変革していくDX戦略に本格的に乗り出し始めた。その最初の取り組みが、2021年度中の開業を目指すデジタルバンクだ。

 「今回のシステム統合プロジェクトの完了を前提にしたDX戦略の柱は、新たな金融サービスの創造、徹底的な効率化・高度化の追求、外部機関とのシームレスな連携の実現の3つです。その中で、デジタルバンクはオープン系クラウドシステムを利用して、早く、安く、軽い、アプリで完結し、これまでアプローチできなかった非対面サービス利用ニーズのある顧客の獲得を目指します」と東京きらぼしフィナンシャルグループ 代表取締役社長 渡邊壽信氏は語る。

 そして、既存の銀行の対面営業を中心とした仕組みと非対面での営業戦略に基づいたデジタルバンクをハイブリッドに融合させて、従来の枠組みを超えたサービスを提供する。その中で、設立してきた戦略的子会社が1つのプラットフォームとして、顧客のニーズや課題を聞き、必要なサービスを活用していく。対面が必要であれば、営業店舗やコンサルティングファームにつなぐ。非対面での銀行サービスを利用したい場合には手数料を低くして預金金利を高めたデジタルバンクを使ってもらう。それぞれの子会社が個別に営業するのではなく、プラットフォーム上で有機的に連携して、それぞれのニーズに応えていく。こうした取り組みを通して、東京きらぼしフィナンシャルグループではDXを推進し、金融にも強い総合サービス業を実現していく考えだ。

関連ページ

PDFダウンロード

お客様事例一覧へ

page top