東北電力エナジートレーディング株式会社

東北電力エナジートレーディング株式会社

Customer Profile

会社名 東北電力エナジートレーディング株式会社
所在地 東京都千代田区丸の内一丁目8番3号 丸の内トラストタワー本館10階
設立 2017年6月30日
事業内容 電力取引市場および燃料先物に係わる取引等
設立時資本 9.9億円(資本金4.95億円、資本準備金4.95億円)

※会社名、肩書き、役職等は取材時のものです。

エネルギー取引・リスク管理(ETRM)システムの導入
トレーディングとリスク管理業務の高度化を推進

東北電力は、電力取引市場での卸電力の売買等による収益力の強化と燃料先物の活用等による燃料費の変動抑制のために、東北電力エナジートレーディング(株)を設立し、エネルギー取引・リスク管理(ETRM)システムの導入を計画。国内ではETRM に特化した知見を有するベンダーがいなかったことから、アビームコンサルティングが協業する米国オープンリンクのアプリケーション「Endur」を導入することにした。事業開始に向けた準備と並行してシステム導入を進め、2018年4月からシステムを本格稼働。取引スキルやノウハウを蓄積し、収益力の向上により、事業を成長させていく考えだ。

プロジェクト概要

導入前の課題

  • 電力自由化により大きく値動きする電力価格への対応
  • エネルギー市場・卸電力取引の発展に伴う先物商品などのリスクヘッジ
  • トレーディング経験の蓄積

ABeam Solution

  • オープンリンク アプリケーション「Endur」
  • オープンリンクとの協働によるEndur導入の支援
  • 日本の市場特性に合わせたEndurのカスタマイズ

導入後の効果

  • Endurを活用したトレーディング事業の開始
  • ETRMシステムによるリスク管理レベルの高度化と電力市場への対応力強化

Story

榎本 重朗 氏

ETRMシステムはゼロから考え方を組み立てなければなりませんでしたが、アビームコンサルティングがその設計図を書く方法論を持っていたので、システムを導入することができました

 

東北電力エナジー
トレーディング株式会社
事業管理部長
榎本 重朗 氏

 

Story

プロジェクトの背景

電力完全自由化の中、市場に対応したトレーディング会社として誕生

 東北電力エナジートレーディングは、電力取引市場での卸電力の売買等と、燃料先物を活用した燃料費の変動抑制のために、2017年6月に設立された企業である。電力・ガスの小売全面自由化・ライセンス制が始まり、電力事業のビジネス環境は大きく変わった。従来、電力会社は地域独占で、需要家が使う電力量が事前に精度良く予測できるため、それに対応する発電所の起動停止や燃料の購入量もおおむね決まっており、いかに安定供給していくかが電力事業者の最も大きい使命だった。

 その状況が自由化によって激変。発電出力が不安定な再生可能エネルギーの増加、あるいは他の電力会社へ顧客が離脱することによる需要の減少や、逆に東北地域以外の顧客の増加など、これまでにない需給の変動が発生することになる。その結果、市場では、電力を販売したいにもかかわらず、電力が足りない、あるいは電力は余っているのに販売先がない、という状況が発生し、従来のような計画的な電力需給運用が通用しなくなっている。「電力自由化が先行している欧米では、電力会社がトレーディング部門を設けて、電力や燃料を機動的に売買したり、リスクを先にキャッチして、ヘッジしたりしている事例を見ることができました。東北電力でもそうしたトレーディング部門が必要だと考え、検討を始めました」と東北電力エナジートレーディング 事業管理部長 榎本 重朗氏は語る。

 従来、電気料金は総括原価方式によって算定され、経済産業大臣の認可を受けて決まっていたが、小売自由化後は、市場の影響を受ける形に変化してきている。すでに欧米では自由化の進展による価格競争の激化、エネルギー市場・卸電力取引の発展に伴う先物商品などのリスクヘッジ手段の多様化、複雑な市場で生き残るための金融取引手段の活用やリスク管理の実施などが進んでいる。こうした中で市場の動きやそれへの対応を大きなテーマにして、東北電力ではトレーディング会社を設立し、事業に取り組むことにした。

Story

アビームコンサルティングの選定理由

「Endur」提供とエネルギー業界に対する知見が決め手

 現在、卸電力市場では、電力の需要と供給のバランス、天候の変化による電力需要の増減、日射による太陽光発電量の変化など様々な要因によって、電力価格は大きく変化する。「電力の価格変動は非常に大きく、突然、通常時の数倍に跳ね上がったりします。電力は貯めることができないという特性ゆえのもので、欧米でも同じです。価格変動が非常に激しい中で、電力価格を予測し、収益を確保していくことが必要なのです」(榎本氏)。

 東北電力にとって、トレーディング部門の運用にあたっての最大の課題は、会社としてトレーディング経験が十分でなかったことだった。欧米の事例や金融取引などの事例を調査した結果、複雑な取引を効率的に管理し、リスクを的確に把握する機能がトレーディングを行う上で不可欠なものであることが分かってきた。そこでトレーディングの中味を確定させる作業を進めるとともに、そのために必要なエネルギー取引・リスク管理(ETRM)システムの導入作業に同時に取り組むことにした。

 東北電力ではETRMシステムの選定にあたって、まずは、国内のパッケージ製品を調べたが、日本にはETRMに特化した製品はなかった。そこで複数の海外製品の中から、欧米で多くの実績があり、アビームコンサルティングがパートナーとして提供している米国オープンリンクのアプリケーション「Endur」を導入することに決めた。「トレーディングのワークフローもそれに対応したシステムも、ゼロから作り上げる必要があり、その際、システムで何をやっていくのか、という基本的な設計図を書く方法論をアビームコンサルティングが持っていたことが、アビームコンサルティングとEndurに決めた最大の理由でした」(榎本氏)。またEndurが幅広い商品に対応していることも選定した理由だった。

Story

プロジェクトの目標と推進する上での課題

同時並行で進めたトレーディング業務の内容策定とシステム導入作業

 プロジェクトはトレーディング業務内容の策定とシステムの導入を並行で進める必要があったため、既存のシステムのリニューアルであればほぼ決まっているはずのシステム要件も明確になっていなかった。そこで業務内容を定義しながら、アビームコンサルティングの支援を受けて、システム面での要求をオープンリンクに提示し、システム構築作業を進めていった。

 「必要となる要件が予想以上に多岐にわたっていました。フロントのトレーディング担当者やリスク管理担当者など関与する人たちの様々な目線で、事業内容を想定しながら、必要になるものを洗い出して、オープンリンクに伝えていったのです。それに対して、オープンリンクからは『こういう機能があるはずだから、それを使ってほしい』という返事が来るので、それを参照しながら導入作業を進めていきました」と東北電力エナジートレーディング オリジネーション部 クウォンツトレーダー 佐藤 隆一氏は説明する。

 長い歴史を持つ金融トレーディングと違って、電力トレーディングは始まったばかりで、やり方がはっきり見えているわけではない。そこで、金融トレーディングと同様に必要と考えられる部分と明らかに違うという部分を融合させて、仕様を決めていかなければならなかった。「日本の電力トレーディングでは、30分をひとつの単位にして、1日で48個の商品を取引します。原資産は同じなのに、需要と供給との関係で時間によって、価格が変わるという電力市場の特性を理解した上で、システムを導入していくのが大変でした」(佐藤氏)。

 

佐藤 隆一 氏

Endurのスペシャリストとしてノウハウをさらに蓄積してもらい、アビームコンサルティングと話せば、Endurのことはすべ て分かるようになってほしいと思います

 

東北電力エナジー
トレーディング株式会社
オリジネーション部
クウォンツトレーダー
佐藤 隆一 氏

Story

課題の解決策

業界知見をベースに高いコンサルティングスキルを発揮し課題解決に尽力

 プロジェクトを推進する上では、仕事のやり方やお互いの文化の違いから生じる意識のズレを埋めていくことが重要だった。オープンリンクからはテンプレート化したものがそのまま提供されてくるので、東北電力側でそれをカスタマイズし、さらに足りない部分はアビームコンサルティングがサポートして必要なものを盛り込んでいった。「苦労したものの一つにオープンリンクとのコミュニケーションが挙げられます。私たちの要望が先方になかなか伝わらず、私たちはオープンリンク側の意図がよく理解できないこともありました。その際、アビームコンサルティングに橋渡し役を務めてもらうことで、スムーズな意思の疎通を図ることができるようになりました。加えて、ドキュメントの作成も大いに助けてもらいました。オープンリンクからの文書の仲介を引き受けてもらうことで、必要な資料やドキュメントを用意することができたのです」と東北電力エナジートレーディング 事業管理部 マネージャー 青木 功氏は語る。

 プロジェクトは構想策定・設計・開発を経て、試行運用に入った。試行運用では連日のように多くの課題が明らかになった。手戻りの発生などでこのままでは計画通りにシステムが稼働しない可能性が生じた。それに対して、アビームコンサルティングが中心になって問題に優先順位を付けて、オープンリンクへの問い合わせや確認作業、修正作業を実施した。予定通り2018年4月からの本格運用に間に合わせることができた。「作業の過程で問題が出てきても、その都度、アビームコンサルティングの担当者は全体を冷静に見ながら、私たちの目になり、手になり、頭になって、問題を解決していきました。自分たちだけではとてもできなかっただろうと思います」(佐藤氏)。

 

青木 功 氏

トレーディング業務の拡大につれ、システムの増強も必要になります。アビームコンサルティングには今までと変わらない手厚いサポートを期待します

 

東北電力エナジートレーディング株式会社 
事業管理部 
マネージャー
青木 功 氏

Story

導入効果と今後の展望

事業成長につながるデリバティブも含めたトレーディング領域の拡大

 こうして、Endurは2018年4月、予定通り本格稼働に入った。Endurは電力取引と燃料取引、現物・デリバティブで幅広い領域をカバーしており、強力なポートフォリオ管理機能をサポートしているので、その特性を生かして、有効活用していく方針だ。「今後、システムの増強も必要になるので、アビームコンサルティングには引き続き支援をお願いしたいと思います」(榎本氏)。

 東北電力エナジートレーディングでは、今回導入したEndurを活用して、今後、積極的な取引を通じて、取引スキルやノウハウなどを獲得・蓄積していくとともに、収益力のさらなる強化を図り、事業の成長につなげていく考えだ。

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