イシュードリブンなデータ活用で
「Connected Enterprise
™」 の領域へ

※本稿は、アビームコンサルティングの「いま」をお伝えする広報誌『ABeam』2018-19年度版から一部記事を抜粋した内容です。

赤石 朗

業界を超えてディスラプション(創造的破壊)の大波が押し寄せる中、いかに個々の企業が持つデータを連携・共有化し、新たな価値やサービスを創出するかが問われている。組織や企業、業界をも超えてつながる「Enterprise」の領域への到達が急がれるが、その際、データに対する根本的な意識改革が必要だという。これまで多くの企業の事例を手掛けてきた赤石朗がその要諦を語る。

赤石 朗
P&T Digital ビジネスユニット長
執行役員 プリンシパル

海外で進む業界間データ連携今取り組まなければ手遅れに

デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現に向けて、「データコネクテッド(企業間、業界間のデータ連携)」が進んでいます。ただ、日本のスピードは決して速いわけではありません。

例えばクルマの自動運転にしても、Googleの自動運転プロジェクトから生まれた自動運転車開発企業Waymo(ウェイモ)は、自動運転車を毎日2万5千マイル走らせているといわれていますが、日本では緒に就いたばかりです。

自動運転車の実証実験では、走行距離がそのままソフトウエアの精度向上につながりますし、データは、ビジネスを生み出す大きな可能性を秘めていますから、早く始めた方が優位に立てます。

もちろん、日本にもデータコネクテッドによって成果を挙げている例があります。アビームコンサルティングがサポートした取り組みでは、全く異なる業種の4つのメーカーがそれぞれのデータを連携させ、生活者の行動情報を基にした、新たなサービス提供を実現しています。

イシュードリブン思考で本当に必要なデータが見える

実は今、DXが進展していく過程で、データに対する考え方に重要な転換期が訪れようとしています。企業同士がデータでつながり、新しいビジネスを生み出そうとする時、最初にあるべきものはデータではなく、課題やニーズであり、達成に向けての仮説です。

ビッグデータなどの言葉が一人歩きしていた頃は、「いろいろなデータが蓄積されているから、これで何かできないか」という考え方がほとんどでした。しかし、まず何をすべきかがあり、「そのために使えるデータは何か」を考えなければ、データに振り回されてしまいます。

人々がデータと向き合い試行錯誤を重ねる中で、データは利用目的を定め、最適に設計されたものでないと使いものにならないと気付いたのです。そして、「データドリブン(データ起点)」から、「イシュードリブン(課題起点)」へと、大きく変わろうとしているのです。

例えば、営業の日報データが過去数年分あるからといって、そこから何か新しい気付きを得るというのは難しいでしょう。日報の書式が営業所ごとや時期によって異なっているなど、そのまま分析には使えないからです。もしデータを蓄積して活用したいのなら、データを集め始める前に、目的に応じた設計が必要です。商品の販売動向を通年でモニターして、売れ筋商品と天候やイベント、顧客属性などとの関連性を把握すると決めれば、おのずと集めるべきデータ項目が決まってくるはずです。

データジャケットの試みがデータマーケットを開く

今後、イシュードリブンなデータ活用でビジネス創造が進んでいけば、求められてくるのは、幅広い領域にわたる豊富なデータを、誰もが閲覧・活用できるプラットフォームです。すでに存在するオープンデータはもちろん、各企業や組織が所有するデータを、属性や目的に応じて利用できる環境を構築できれば、データ活用は一気に広がります。

いま私たちは、東京大学大学院工学系研究科 システム創成学専攻所属 大澤研究室 大澤幸生教授の「データジャケット」と言う考え方に注目して、理解を深めています。

レコードやCDのジャケットと同様に、例えばクラウド上の定められた場所にデータの中身を知らせる目録(データジャケット)が収められていて、誰でも閲覧できる仕組みです。閉架式の図書館の、蔵書検索システムに似ているかもしれません。

データジャケットには、単にデータの名前と内容説明があるだけでなく、「このデータはこういう分析に使える」といったデータ所有者のコメントが付加されていて、データの利用目的の示唆を得ることも可能です。こうして同一の仕様で整えられたデータジャケットを見て、自社の課題解決に活用できるデータだと判断したら、そのデータそのものにアクセスするという考え方です。

こうした活動が基盤となり、データによって企業のイノベーションが進むのはもちろん、「Connected Enterprise®(業界間連携)」によって、全く新しい価値を提供するビジネスが実現できるはずです。

基盤によって企業・業界をまたいだデータの共有が進めば、やがては株式市場のように、価値のあるデータが高い値で取引されるマーケットが生まれる可能性すらあります。こうした場ができれば、今は各自が貯めたまま活用できないデータの流動性が高まり、よりDXが高度化していくと考えられます。

インフラ利用がデータフル活用の近道

しかし、こうした理想が姿を現すには、一定の時間が必要です。一般の企業がデータの収集・蓄積・分析・活用のプロセスを実践するにはどうすべきでしょうか。自社でゼロから取り組み、ツール開発も自前で整える道もありますが、変化が激しい環境にフィットし続けるのは困難です。あらかじめ最適化されたデータ活用プロセスを、オンデマンドに活用できる外部の仕組みを利用する方が、柔軟でスピード感のあるデータ活用が可能ですし、自前で準備するよりコストも抑えられるはずです。

私たちが提供する「ABeam Cloud®」はその選択肢の一つです。アビームコンサルティングは、これまで手掛けたERPをはじめとするさまざまな分野のシステム構築・改修・統合といったプロジェクトで、データに関する数多くの知見とノウハウを蓄積してきました。これをフルに活用し、データコネクテッドな社会と、そこから生まれる新しいビジネスをサポートしたいと思います。

執筆者

赤石 朗

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