日清食品ホールディングス株式会社

日清食品ホールディングス株式会社

Customer Profile

会社名 日清食品ホールディングス株式会社
所在地 東京本社 東京都新宿区新宿6-28-1
大阪本社 大阪府大阪市淀川区西中島4-1-1
設立 1948年9月
事業内容 食品製造業
資本金 251億2200万円

※会社名、肩書き、役職等は取材時のものです。

ESG課題を「財務指標との関係性」と
「ESG指標同士の関係性」の両面で分析
企業価値との関係を可視化し、CSV経営の高度化につなげる

即席麺をはじめ、チルド、冷凍、菓子、飲料などの事業を展開する日清食品ホールディングス株式会社。同社はCSV経営の考え方に基づいてESG課題に取り組んできた。その中で、ESG課題の企業価値との関係性を可視化する必要性を感じ、アビームコンサルティングのDigital ESG Data Analyticsを採用した。またアビームをパートナーにESG指標間の関係性も分析し、ESGの企業価値向上への道筋も実証した。今後はDigital ESG Data Analyticsを継続的に実施し、さらに精緻化して、CSV経営の高度化につなげていく考えだ。

日清食品ホールディングス株式会社

 

プロジェクト概要

導入前の課題

  • ESG課題における企業価値との関係性の把握

ABeam Solution

  • Digital ESG Data Analytics

導入後の効果

  • ESGとPBRとの関係性分析(柳モデル)では多くのESG指標に望ましい関係があることを検出
  • ESGの企業価値向上への道筋分析ではESG指標間の関係性を実証、示唆を取得

Story

横山 之雄 氏

Digital ESG Data Analyticsは今後継続して取り組んでいく方針なので、アビームには評価および自走の仕組みなどを多面的にサポートしてほしいと思います

 

日清食品ホールディングス株式会社
取締役・CSO
兼 常務執行役員
横山 之雄  氏

Story

プロジェクトの背景

CSV経営高度化に向け、ESG課題の定量化を計画

 日清食品グループ(以下、日清食品)は1948年大阪で創業した。58年には「チキンラーメン」、71年には「カップヌードル」を開発し、即席麺を中心とする食品メーカーである。同グループは創業者の安藤百福が掲げた「食足世平(食が足りてこそ世の中が平和になる)」「食創為世(世の中のために食を創造する)」「美健賢食(美しく健康な体は賢い食生活から)」「食為聖職(食の仕事は聖職である)」の創業者精神をミッションに掲げ、事業を展開している。2021年5月には、これからの10年に向けた「中長期成長戦略」を公表。新しい食文化を創造し、環境・社会課題を解決しながら持続的成長を果たす、日清食品独自のCSV経営を追求している。その中で、「既存事業のキャッシュ創出力強化」「EARTH FOODCHALLENGE 2030」「新規事業の推進」の3つを中長期的な成長戦略テーマに事業に取り組んでいる。

 中でも2020年6月に発表した環境戦略「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」は、有限資源の有効活用と気候変動インパクト軽減へのチャレンジを通して、地球との共生力を強化し、既存事業の超長期化を図ることを目標に、ESGに関する取り組みを強化している。日清食品は創業時から人や社会への貢献を第一義に考え、事業を成長させてきたことから、これまでもCSV経営の考え方に基づいて、ESG課題に取り組んできたといえる。そのため、ESGに関する取り組みは、CSV経営として企業価値を向上させるものだと明確に位置付けている。「CSV経営では企業と社会の共通価値を創り出すストーリーとなる価値創造プロセスにおいて、活用する資本を循環させて、企業価値と社会価値を増幅させることが重要になります。その際、ESG課題への取り組み効果、企業価値向上への貢献度合いについて、定量化できていないため、投資家の十分な理解を得られていないと感じていました。取り組むべき課題はESG課題整理表としてまとめていますが、特に非財務といわれている価値がどのように表出してくるのかを表現したいと思いました」と日清食品ホールディングス株式会社 取締役・CSO 兼 常務執行役員 横山 之雄氏は語る。

Story

アビームの選定理由

Digital ESG Data Analyticsを成功させるのに不可欠な業務理解力とデータに関する知見を評価

 日清食品では、ESG指標などの非財務的価値を、財務価値と関係付け定量化するためには、客観性や学術的な根拠が必要と考えていた。そんな中、エーザイ株式会社 専務執行役CFO 柳 良平氏による非財務的価値と財務的価値の価値関連性分析に対する取り組みを日本CFO協会のセミナーで知り、分析を実施することを決めた。

 分析プロジェクトのパートナーには、複数のコンサルティング会社を比較検討し、アビームコンサルティングを選んだ。「アビームは以前、基幹システムを導入した際のパートナーで、その専門性の高さや私たちの事業を理解し実現可能な提案に基づく変革の支援を高く評価していました。ですから、アビームがDigital ESG Data AnalyticsでESGデータの分析を行っていると聞いて、一緒にやりたいと飛び付きました」と横山氏はほほ笑む。今回のプロジェクトは、多くの関連する部署の社員を巻き込んで構築していくため、専門性に加えて、自分たちと一緒になって新たな取り組みを切り開いていくという強い意志と関わり方が大事だと考えていたのだ。「課題を洗い出すところから始めるので、コンサルタントと社員とのコミュニケーションや信頼関係がとても重要になります。アビームは業務に対する深い理解を礎としたコミュニケーション能力の高さが企業文化として組織に根づいているので、ゼロから築き上げていくパートナーとして最も信頼できると判断しました」(横山氏)。

Story

プロジェクトの目標・課題と解決策

俯瞰型分析と価値関連性分析の両面で、企業価値との関係性を可視化

 日清食品では、CSV経営に向けた価値創造プロセスを検討する中で、非財務的価値の関係性を見ていくことが重要だと考えていた。その上で、エーザイ柳氏が提唱する柳モデル分析は、企業価値に影響を持つと考えられるESG課題を特定するためのもので、分析結果からは要素間の関係が把握できる。一方その背景にある「なぜ」という問いに答えるには、日清食品のミッションとの結び付きやそれぞれの価値の関係性を分析する必要があると、今回の取り組みの中で考えを発展させていった。

 そこで日清食品では、柳モデルを活用したESG指標とPBRの関係性分析に加え、独自に考案した価値関連性の分析も行うことにした。価値関連性の分析では、日清食品オリジナルの仮説を立て、対象とするESG指標を絞って指標間の関係を検証、ESGアクションから企業価値向上までのストーリーを実証する。
「社内でのオペレーション改革に生かしやすいため、指標間の関係性を見るのはとても大事だと考えています」(横山氏)。

 Digital ESG Data Analyticsでは、ESG全域についての指標の収集が必要になる。そのために、まずは収集したい指標の項目を定め、次に各部門から該当するデータを出してもらう。データによっては、長期間蓄積していて過去に遡って見られるものもあれば、それほどでもないものもある。「過去のデータを収集するのは本当に大変です。どの部門も今回のAnalyticsのためにデータを用意してきたわけではありません。今回の分析のためにデータをまとめなければならず、意義を理解し、協力してくれた各部門には本当に感謝しています」(横山氏)。

 日清食品では、以前からESGデータの開示を進めるために、各部門からESGデータの収集を行っていた。その経験によってESG指標に対する理解や協力体制ができていたことがベースとなり、今回、全社一丸となっての取り組みが進んだ。結果、最終的にはCO2排出量や従業員1人当たりの研修時間、社会課題に貢献する商品の創出数など270項目余りの指標を収集することができた。

 一方、価値関連性の分析のための仮説は、4つのミッションに基づく価値形成の過程で出てきた要素を絞り込んで、フレームワークづくりの議論を進め、整理していった。「指標を分析すれば数値は出てくるのですが、重要なのはその解釈です。私たちはデータアナリティクスの専門家ではないので、アビームが統計に関する知見を基に、分かりやすくサポートしてくれました。おかげで深い議論ができました」(横山氏)。
 

ESGアクションと企業価値の関係性を分析
創業者精神に基づく日清食品の活動が、定性面に加えて定量データに基づく分析の側面からも企業価値向上につながることが明らかになった。
日清食品では、このようにESG(非財務)の取り組みがどのように企業価値に関係しているかを定量的に表す取り組みを行っている。
 

ESGアクションと企業価値の関係性を分析1

日清食品の重要経営指標であるEPSとPERをターゲットにした独自分析では、ESGアクションと企業価値の相関性に加えて「ESGアクション同士の相関性」を分析することで、どのような経路をたどり企業価値の向上につながるのか、ストーリーの形で明らかにする試みを行った。

ESGアクションと企業価値の関係性を分析1

Story

導入効果と今後の展望

継続的にDigital ESG Data Analyticsを実行、精緻化して、経営に役立てる

 今回のプロジェクトで、定性面の検証では、将来的な財務インパクトが高いと想定されるESG要素を活用した。「日清食品が重点的に取り組むテーマ」と、「創業者精神に基づくミッション」が密接に関係していることが確認できた。また、柳モデルを活用したESG指標とPBRの関係性分析では、創業者精神に基づくESGの取り組みと企業価値の間に正の関係があることが明らかになった。さらに、価値関連性の分析では、分析に利用した270項目余りの非財務データにおいて項目の多くが企業価値と関係していることが分かった。

 例えば、研究開発費が1%増加すると、7年後のPBRが1.4%増加するという結果は、長年培ってきた加工技術に基づく「フードテックカンパニー」としての取り組みを加速させていく上で大きな意味を持つ。さらに、CO2を年間1%減らすと、8年後にPBRが1%増えることも分かった。「経営戦略の中で重視している取り組みとの関係性を数値として出すことができたのは、経営上の重要な指針になっていきます。自社の自信にもなりますので、統合報告書に盛り込み、投資家との対話に積極的に活用していくつもりです」(横山氏)。

 日清食品では、今回トライアルを行ったDigital ESG Data Analyticsを継続して実施し、非財務的価値を評価していく仕組みとして定着させていく。さらに精緻化し、ESG指標間の関係性と経路の可視化を進めていき、CSV経営を高度化していく計画だ。その中で、非財務的価値を定性/定量の両面で見ていくことが企業経営のスタンダードになっていくように、投資家や他の企業に向けて積極的に開示していく考えだ。

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