大鵬薬品工業株式会社

大鵬薬品工業株式会社

Customer Profile

会社名 大鵬薬品工業株式会社
所在地 東京都千代田区内神田錦町1-27
設立 1963(昭和38)年6月1日
事業内容 医薬品、医薬部外品、医療機器、食料品、日用品雑貨などの製造、販売および輸出入
資本金 2億円

※会社名、肩書き、役職等は取材時のものです。

基幹システムを短期間でAWSへ移行
PMOとして各ベンダーを調整し、プロジェクトを計画通り完遂

医薬品メーカーの大鵬薬品工業(以下、大鵬薬品)は、企業内の基幹OSとして利用していたAIXの保守サポートが2020年4月に期限切れすることから、AIXで稼働していたSAPシステムと関連システムをクラウドサービスのAWSに移行することにした。移行にあたり同社は、計画策定と設計・開発を担当するパートナーとしてアビームコンサルティングを選定。約10カ月という短期間でありながら、アビームコンサルティングはPMOとして10社近くのベンダーを調整。プロジェクトは計画通り、2019年8月に稼働を開始した。稼働後も大きなトラブルもなく、安定したパフォーマンスを実現している。

プロジェクト概要

導入前の課題

  • AIXの保守サポート切れに伴うSAPシステムをAWSへ移行
  • 既存システムと同レベルの機能、サービスの実現
  • 各ベンダーの品質管理と調整

ABeam Solution

  • 計画フェーズにおけるプロジェクト計画の策定
  • 設計・開発フェーズにおけるPMO業務
  • 技術を理解したプロジェクトマネジメント

導入後の効果

  • SAPシステムと関連システムをAWSへ計画通り移行
  • パフォーマンス向上とオンプレと同レベルの機能、サービスを実現
  • 短期間の開発でも安定した運用

Story

髙橋 亮 氏

今回、たくさんのベンダーが関わる中で、難しい立場でPMO に入ってもらいましたが、大きな成果を上げることができました。
今後、さらに大きなプロジェクトでも力を発揮してくれると期待しています

 

大鵬薬品工業株式会社
情報システム部 IT企画推進課
課長補佐
髙橋 亮 氏

Story

プロジェクトの背景

AIXのサポート切れを前に、SAPシステムと関連システムのクラウド移行を検討

 大鵬薬品は、1963年に大塚グループの一員として創立された製薬会社である。同社は企業理念である「私たちは人びとの健康を高め満ち足りた笑顔あふれる社会づくりに貢献します。」のもと、抗がん剤の研究開発、高品質な製薬の提供と安全性情報の伝達に取り組み、医療用医薬品とコンシューマー製品の2つの事業を展開してきた。

 医薬品事業では経口の抗がん剤が一般的ではなかった1970年代半ばに、経口抗がん剤をいち早く発売。以来効果を増強しつつ、安全性を高めるための研究開発を進めてきた。2014年には日本で結腸・直腸がん治療薬として、「ロンサーフ」の販売を開始。同治療薬は現在、米国、欧州、中国など世界76ヵ国(2020年1月時点)で承認され、大鵬薬品ではグローバル展開を加速している。このように、世界のがん治療に貢献できる医薬品開発に挑戦する一方で、免疫・アレルギー、泌尿器領域においても新たな医薬品開発に取り組んでいる。またコンシューマーヘルスケア事業では、「チオビタ」「ソルマック」「ハルンケア」シリーズなどを販売している。

 大鵬薬品では基幹システムであるSAP ERPとSAP® BusinessObjects™ 、EDI(Electronic Data Interchange)などの関連するアプリケーションや運用ツールをAIXサーバーで運用してきた。

 しかし、AIXの保守サポート契約が2020年4月に終了することから、プラットフォームをオンプレミスからクラウドへと移行することに決めた。「今まで、大鵬薬品の情報システム部は自分たちでシステムを開発・運用する文化があり、データセンターにサーバーを設置しオンプレベースでシステムを運用してきました。しかし、熟練エンジニアの減少や働き方改革を進める中で、情報システム部もコア業務にシフトしていくことが求められるようになりました。自社運用を再検討する中で、スペシャリストが運用管理するクラウド事業者のプラットフォームに移行しようという結論になったのです」と大鵬薬品 情報システム部 IT企画推進課 課長補佐の髙橋亮氏は語る。

Story

アビームコンサルティングの選定理由

SAPの保守運用の実績と豊富な経験からパートナーに選定

 大鵬薬品の中でシステムのクラウド移行は今回が初めての取り組みであり、パフォーマンスやセキュリティ、安定稼働など、今までのサービスレベルを保ったままクラウドへ移行することが最大の課題だった。そこで、大鵬薬品では信頼できるパートナーの選定は重要と考え、プロジェクトの計画策定と設計・開発の2つのフェーズを担当するパートナーの選定に入った。今回のプロジェクトは移行作業の期間が短い上に、基幹システムで事業活動の根幹を担うシステムであり、プロジェクトは絶対に成功させなければならない。

 大鵬薬品は数社から提案依頼書を受けて比較検討。その結果、パートナーとして選んだのがアビームコンサルティングだった。「アビームコンサルティングを選んだ理由は当社のSAPシステムの運用保守を担当していたこと、SAPソリューションの経験が豊富なことでした。PMOを担ってもらうのに、私たちの業務やシステムを知らないベンダーではできませんし、SAPシステムのクラウド移行というプロジェクトへの理解度も深いと判断したのです」と大鵬薬品 情報システム部 ERPシステム課 係長の宮寺大介氏は説明する。

 その上で大鵬薬品では2018年10月から計画フェーズをスタートさせ、11月までの1カ月間で実現可能なプラットフォームの洗い出し、必要となる移行の可否と期間、費用の整理を行った。当初、プラットフォームはAWSとMicrosoft Azureの2つを候補にしていた。大鵬薬品としてシステムの可用性やコストメリットを考慮したことに加え、2021年から大塚ホールディングスがAWS上でSAPシステムによる次期ERP統合環境の構築を決めたことからAWSへの移行に決めた。

 そこから現行のアプリケーションをAWSのLinuxで動作したとき、どのような影響が生じるかについて細かくチェックしていった。「パフォーマンスの問題はもちろんですが、移行後に機能とサービス内容を変えずに同じ形で動作させることができるかどうかを重点的に確認しました。長い間、AIXを使っていたため、AIXで開発したプログラムが何千本もありました。全部の動作確認は無理でしたが主要なものは検証して、動作を確認しました。新しいシステムを開発するよりも難しい作業でしたが、アビームコンサルティングの支援のもと、何とか1カ月で計画フェーズを完了させることができました」(宮寺氏)。

 

図 プロジェクト概要

図 プロジェクト概要
宮寺 大介氏

アビームコンサルティングなくしては今回のプロジェクトは成功しなかっただろうと思っています。PMOとしてベンダー間の調整と、SAPシステムの移行の両方を担当してもらい、本当に感謝しています

 

大鵬薬品工業株式会社
情報システム部
ERPシステム課
係長
宮寺 大介氏

Story

プロジェクトの目標と推進する上での課題、解決策

PMOとして10社近くのベンダーの調整役を担い、プロジェクトを推進

 2019年1月、AWS移行の設計・開発フェーズが開始した。プロジェクトでの最大の課題は、大鵬薬品のメンバーが少ない中で、プロジェクト管理とテストの実施、SAPシステム、帳票システム、データベース、ジョブ管理、システム監視などの各アプリケーションのAWSへの移行と環境構築を行う10社近くのベンダーの調整だった。

 一般的に大規模なプロジェクトでは大手ベンダーがPMOとして入り、各領域にベンダーを配置する。そのため、指揮系統や業務領域が明確になっていてプロジェクトマネジメントは進めやすい。しかし今回はすべてのベンダーが横並びでプロジェクトに加わる形だった。「プロジェクトで問題が起きると、それぞれのベンダーは自分たちが扱うべき問題ではないと判断しがちでした。アビームコンサルティングはそうしたベンダー間のグレーゾーンを整理して、それぞれの担当を切り分けて、プロジェクトが計画通り進むように調整してくれました」(髙橋氏)。

 中でも難しかったのがDR(Disaster Recovery)サイトの設計と構築だった。大鵬薬品ではDRを非常に重視しており、被災時には直ちにDR環境に切り替えて、業務を再開できるように設定している。今回の移行では、AWS標準機能によるDRの実装を計画していたが、プロジェクト途中で、要件を満たしていないことが分かり、急遽設計を変更。追加でDRソフトを導入することにした。DRソフトが決定したのが本番稼働の3カ月前。短期間でDRの構築を行わなければならなかった。

 「これまで私は多数のPMOを見てきましたが、通常のPMOは調整役中心で技術を知らない人が多いのが実情です。ところが、アビームコンサルティングのPMOは技術に関して豊富な知識を持っていて、技術をベースにしながら、プロジェクトマネジメントを行ったので、問題が起きてもスムーズに解決し、プロジェクトを進めてくれました」(髙橋氏)。
 

図 プロジェクトスケジュール

図 プロジェクトスケジュール

Story

導入効果と今後の展望

無事SAPは安定稼働、新たな大規模プロジェクトに期待

 プロジェクトは本稼働直前まで設定変更などがあったにもかかわらず、2019年8月お盆休み中に計画通り、カットオーバーできた。目標としていた従来のシステムと同じサービスレベルでの運用を開始。「最後の最後まで気を抜けないプロジェクトでしたが、高い品質を実現することができ、稼働後も大きなトラブルはありません。パフォーマンスは前のシステムより全体的に向上し、ユーザーを待たせるようなこともなくなりました。正直なところ、ここまでパフォーマンスが向上するとは考えていませんでした」(宮寺氏)。

 大鵬薬品では今回、ERPをAWSに移行したが、データセンターに残っている他のアプリケーションも順次、AWSに移行していく計画だ。すでにMR関連システムの移行は2019年中に完了、2020年には基幹系を補っている他のアプリケーションも移行していく予定だ。このように大鵬薬品では今回のプロジェクトでアビームコンサルティングの能力を評価しており、今後はAIなどの最新技術を利用したプロジェクトや大規模なプロジェクトでもアビームコンサルティングを中心にした取り組みを進めていく考えだ。

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