株式会社パルコ

株式会社パルコ

Customer Profile

会社名
株式会社パルコ
所在地
東京都渋谷区神泉町8-16
創業
1953年2月13日
資本金
343億67百万円(2018年2月末日現在)
事業内容
商業施設の開発・運営を中心に、空間創造やビル管理を行う総合空間事業、専門店事業、 エンタテインメント事業、Webコンサルティング事業を展開

※会社名、肩書き、役職等は取材時のものです。

テナントシステムをアビーム不動産ソリューション(ACRES)で再構築。出店交渉からテナントへの支払・請求まで、業務の効率化を実現

ショッピングセンター「PARCO」を中心に事業を展開するパルコは、1998年の開発以来使用し、老朽化したテナントシステムを全面刷新した。パートナーにアビームコンサルティングを選び、アビーム不動産ソリューション(ACRES)を導入。2016年4月、新しいテナントシステムが稼動し、出店交渉から稟議起案、契約管理、賃料計算まで、業務の効率化を実現した。

プロジェクト概要

課題

  • 改修を繰り返し、長年使い続けてきたテナントシステムの老朽化
  • 法改定に伴う、定期借家契約を中心とした厳密な契約管理への対応
  • 収益向上に向けた、業務効率化の推進

ソリューション

  • アビーム不動産ソリューション(ACRES)
  • テナント管理の業務プロセス刷新
  • 不動産業界における実績・ノウハウ

成功のポイント

  • クラウド環境へ切り替えることで、ハードウエアにかかるコストを削減
  • 稟議情報・契約情報・賃料計算を一元管理することで、厳密な契約管理を実現
  • 業務の効率化や作業の手間を削減することで、現場の働き方改革を実現

Story

中嶋 史子 氏

複雑な日付管理の追加開発、膨大な移行データの整理など大変な作業を一緒に悩んだりしながらも、無事終わらせることができ、とても感謝しています

 

株式会社パルコ
グループICT戦略室
室長
中嶋 史子 氏

Story

プロジェクトの背景

1998年に開発したシステムを全面刷新

 株式会社パルコ(以下、パルコ)は1953年に設立され、ショッピングセンター「PARCO」を中心に、商業施設の開発・運営を手がける企業だ。「訪れる人々を楽しませ、テナントを成功に導く、先見的、独創的、かつホスピタリティあふれる商業空間の創造」を経営理念に、長期ビジョン「都市マーケットで活躍する企業集団」を掲げ、「都市の 24時間をデザインするパイオニア集団」と「都市の成熟をクリエイトする刺激創造集団」の実現を目指している。

 パルコでは2017年度からスタートした中期経営計画で、都心型店舗の強化などによるストアブランドの進化や、新業態開発など商業不動産のプロデュース、劇場やライブハウスなどソフトコンテンツの拡大を図っている。

 さらに、店舗事業が営業利益の約9割を占める事業ポートフォリオの変革を実現していく計画だ。「以前からパルコでは、各店舗に社員を配置して、店舗ごとにテナントとの折衝や管理などの業務を完結させてきました。しかし、収益を落とさずに利益を上積みしていくには、現場社員の業務の効率化や手間を削減するとともに、本部で横断的に担当すべき業務を切り分けて実施することが必要だと考えました」とパルコ グループICT戦略室 室長 中嶋 史子氏は語る。

 そこで問題になったのが1998年に開発し、15年近く使ってきたテナントシステムの老朽化だ。テナントシステムはテナントの管理業務を行う重要なシステムで、契約管理と賃料計算の2つに分かれている。運用開始当時から今まで、組織、業務、法律、運用が全く変貌する中で、部分的な改修を積み重ねながら、使い続けてきた。「現在はユーザー部門で従事していますが、98年当時の開発メンバーの一人です。その経験から見ても、運用とのアンマッチは限界に達していました。一番大きいのは、法律が変わり、定期借家契約が認められるようになったこと。一般的な賃貸借契約と比べると、非常に厳密な契約管理が必要になったのです」とパルコ 事務統括部 担当課長 吉沢 真由美 氏は語る。また当時は、システム開発に割けるリソースが限られていたことから、まずは稟議起案、次いで賃料計算、情報分析と次々に増築するようにシステムを開発した。そのため、各システムを連携させる部分で、運用上の歪みや不具合も発生していた。

Story

アビームの選定理由

テナント管理業務の効率化と発想を超えた提案を期待して、アビームコンサルティングを選定

 パルコは、システムの部分的な手直しでは対応できないと判断、テナントシステムを全面刷新することを 決定した。そして、テナントとの出店交渉から稟議起案、決裁までの契約管理と、テナントへの支払・請求処理、分析までの賃料計算の両方を一元的にカバーしたシステムとして再構築することにした。「従来のシステムでは、2000年問題で賃料計算を止めないことを必須要件として、賃料計算システムの上位に稟議 起案のシステムを作っていました。その目的は、転記ミスを防ぎ、賃料計算のために最も合理的なマスターを入れることでした。ところが、定期借家契約で契約管理が大きな業務になったことから、稟議情報と契約情報の管理、賃料計算をひとつのシステムで完結できるようにしたいと考えたのです」(吉沢氏)

 そこで、①テナントとの出店交渉、稟議起案段階における業務の効率化、②テナントとの契約管理における業務の効率化、③テナントとの経費控除計算、支払・請求処理(賃料計算)における業務の効率化の3つの実現を目標にすえて、システムを再構築することにした。

 コンペの結果、最終的にアビームコンサルティングを選定、パルコはアビーム不動産ソリューション(ACRES)を導入することにした。アビームコンサルティングを選んだ最大の理由は、既存システムのマイグレーションをベースにシステムを統合するという提案ではなく、従来のシステムにこだわらずに、目標に向けた新たなシステムのデザインを提案したことであった。またパルコは、今までアビームコンサルティングとは取引がなかったため、ACRESの機能や他社での豊富な導入経験から、自社の発想を超える提案がなされる可能性にも期待した。

 

吉沢 真由美 氏

不動産業界での多くの経験を活かして、今までのパルコのやり方や発想を超えるきっかけとなるようなアイデアを提案して欲しいと思います

 

株式会社パルコ
事務統括部
担当課長
吉沢 真由美 氏

Story

プロジェクトを推進する上での課題と解決策

テナント移動にも柔軟に対応する日付管理の機能を開発、膨大な量のデータも移行

 2013年11月、ユーザー部門も加わって、テナントシステム再構築プロジェクトがスタートした。ユーザーから改善要望などをヒアリングして要件をまとめ、追加機能の開発を進めていった。設計・開発過程で一番大変だったのが「日付管理」だ。「テナントと契約しても、途中で条件が変わることは頻繁に起こります。例えば、3年間の契約を結んだテナントが1年半でフロアを移動することもありますし、期間満了まで営業せずに退店することもあります。また、契約期間内に改装で営業を休んだり、改装オープン前に短期の催事として別区画で営業する場合もあります。こうした場合、新旧の契約情報の履歴を管理し、日割りで賃料などを計算していきます。この仕組みが非常に複雑で、追加機能も含めて、開発には非常に苦労しました」(中嶋氏)

 また、既存システムは「契約管理」と「賃料計算」の2つに分かれていたため、データの整合性がとれていないという問題もあった。契約データは文章で記載されている項目が多く、それが夜間バッチ処理によって賃料計算システムに連携していた。データの中には不足している項目や文章から内容を読み取らなければならないものもあり、担当者が手入力で入力し直していたが、その入力作業や両システム間のデータの 定期的な突合作業も業務負荷となっていた。新しいテナントシステムへのデータ移行の際には、両システムの履歴データの多くの項目の中から、どの項目を新システムのどの項目にマッピングするべきか、整理する必要があった。「データは1998年から蓄積されているので、膨大な量に上り、中には10年以上契約が続いているテナントや特殊な契約処理の仕方をしているケースもありました。それらをすべて移行させなければいけないので、テスト段階で賃料計算の結果と合わせながら、移行させていきました」(中嶋氏)

 

図 新システム全体機能

Story

導入効果と今後の展望

業務が効率化され、現場社員が余裕を持って仕事に取り組める環境に

 2016年3月、再構築プロジェクトは完了し、新しいテナントシステムが稼動した。新システムでは、再構築の目標としていた3つの領域での業務を効率化できた。まず1つ目である、「テナントとの出店交渉」や「稟議起案段階」では、システム内に保持するデータをテナントとやりとりする書面や社内の文書に流用・活用 できるようにした。これによって、各文書の入力の手間を減らし、転記ミスを防ぐことができるようになった。また、稟議をワークフロー化、添付資料も電子化し、フローの途中で本部契約管理スタッフのチェックを入れることにより、入力ミスや手戻りを削減、フローを迅速化した。

 2つ目の「テナントとの契約管理」では、特定の期日到来時に担当者にメールで通知するとともに、管理台帳で進捗を管理することで、対応の遅れを防止。かつ契約期間終了日の検索を容易にして、延長や 営業終了予定を管理、次のアクションにつなげることが可能になった。

 3つ目の「賃料計算」では、稟議とテナントマスターを統合し経費金額を明確化すると共に、自動計算の範囲を拡大することで、各店舗経理の入力の手間、手計算での調整入力を削減。テナントごとの営業料・経費控除の計算結果は夜間バッチを待たずに、リアルタイムで随時確認できるようになった。これまで、各 店舗の経理責任者が毎月のテナントシステム締め日に不在となるようなシフト体制は現実的ではなかった。ところが、締め日前に早めに作業を終えて、リアルタイムで計算結果を確認できるので、稼働開始から3〜4カ月経った頃から、経理責任者が締め日に休む店舗が出始めた。「毎月、テナントシステムの締め日から 2〜3日で会計システムの締め日になり、その後、月次の報告書作成と続きます。ですから、経理責任者はその間をうまくやり繰りしないと、休みがとれなくなってしまうのです。最初は締め日に経理責任者が休んでいる店があると聞いてびっくりしたのですが、新しいシステムの機能を自分たちのペースに合わせて使いこなそうという姿勢が感じられました。新しいシステムは現場社員の余裕を持った働き方も可能にしたわけで、本当によかったと思います」(吉沢氏)

 加えて、オンプレミスからクラウド環境に変わったことで、ハードウエア老朽化に伴う更新の必要がなくな り、メインフレームも利用しなくなったため、コスト削減につながった。パルコでは、既にテナントシステムの利用が定着していることから、今後はユーザーから出される要望を システムに盛り込み、高度化していく考えだ。「これから、PARCOという屋号でない店舗も含めて、店舗 が増えたり、また契約や業務の改革のアイデアが出てくると思います。将来的にも継続して使えるように、システムを拡張、整備していきたいと思います」(中嶋氏)。その上で、パルコではアビームコンサルティン グとのパートナーシップのもと、法律や組織、運用などの変化に合わせて、システムの機能追加や運用の見直しなどに取り組み、テナントシステムを長期間にわたって使える形にしていきたいと考えている。

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