オリンパス株式会社

オリンパス株式会社

Customer Profile

会社名
オリンパス株式会社
所在地
東京都新宿区西新宿2-3-1 新宿モノリス
創業
1919年10月12日
資本金
1245億円(2017年3月31日現在)
事業内容
精密機械器具の製造販売

※会社名、肩書き、役職等は取材時のものです。

6ヶ月間でIT投資評価基準をグローバルで統一し、全社のIT投資を俯瞰して、ガバナンス強化と戦略的なIT投資に踏み出す

医療機器分野を中心にグローバルに事業を展開するオリンパスは、事業の拡大に伴うITコストの増加に危機感を 持っていた。そこでその適正化と競争力向上に向けたIT投資のために、ITコスト最適化とIT投資ポートフォリオ構 築のプロジェクトを計画。パートナーにアビームコンサルティングを選び、6 ヶ月強の期間で国内・海外での投資 案件評価を実現した。様々なIT投資案件を比較検討できるように評価基準を統一したことで、グローバルで戦略 的な投資判断が可能になった。

プロジェクト概要

課題

  • 売上高に対するITコストの適正化
  • 国内、海外でのITコストの実態把握と無駄な投資の削減
  • IT投資の見える化と、競争力向上のためのIT投資への振り向け

ソリューション

  • ITコスト分析・コスト削減施策検討
  • IT投資ポートフォリオ評価フレームワークの構築
  • グローバルIT費用管理プロセス確立の支援

成功のポイント

  • グローバルレベルでのITコストコントロールの実現
  • IT投資ポートフォリオ評価の基準にもとづく意思決定の実現
  • 戦略的な新規案件への重点的なIT投資に向けた踏み出し

Story

石橋 正行 氏

アビームコンサルティングには今回、非常によい仕事をしてもらったと感謝しています。
今後新しい技術をビジネスに応用していけるような、IT人材の育成の面もご協力をお願いしたいと思います

オリンパス株式会社
IT本部 IT戦略推進部
IT戦略担当部長
石橋 正行 氏

Story

プロジェクトの背景

ITコスト比率の引き下げと明確な基準にもとづくIT投資評価を計画

  オリンパス株式会社(以下、オリンパス)は1919年に顕微鏡事業で創業し、光学技術を基礎に内視鏡を軸にした医療事業、顕微鏡などの科学事業、デジタルカメラなどの映像事業を展開するグローバル企業だ。同社は2016年4月からスタートした「2016経営基本計画」で、「One Olympus」を経営方針のひとつに定め、グローバル・グループベースで、価値観・戦略を共有し、経営資源の最大活用で、全社のパフォーマンスの最大化を図ることを目指している。
  オリンパスでは2016年に業務改革本部を設け、全社横断的に働き方改革や研究開発などのテーマで分科会を置いて、業務改革に取り組んでいる。その中のひとつがグローバルレベルでのガバナンスの強化だ。同社は売上の約8割を海外で占めるが、グローバルでのガバナンスは決して強いとは言い切れない。そこで、「One Olympus」をキーワードにして、グローバルでのガバナンスを効かせていくための施策を実施している。
  その施策の柱のひとつがITコストの最適化だ。オリンパスはグローバルでの事業の拡大に伴うITコストの増加が課題だった。以前からIT投資を行う際の評価は行っていたものの、仕組みが部門によって異なっていたり、国内と海外でルールがバラバラだったりして、統一的に実施されていなかった。「IT本部では、ITコストの引き下げに取り組んできましたが、単純に減らすだけでは競争力の向上につながりません。ITコストの構造を見直して、競争力強化のために効果的に投資していくことが必要です。そこで、国内・海外ともにITコストを可視化・分析し、適正な評価を行い、本来投資すべきところに振り向けていくためのIT投資評価を実施したいと考えたのです」とオリンパス IT本部 IT戦略推進部 IT戦略担当部長 石橋 正行氏は語る。

Story

アビームの選定理由

一緒に議論、現場の意見を聞いて課題解決を支援するパートナーとして選ぶ

 オリンパスではITコストの適正化のために、新規案件の投資効果評価と既存システム運用コストの分析・削減の両方を行うことにした。新規案件は海外では大規模案件を、国内では中規模以上の案件を、評価して投資するかどうかを判断する。既存システムは人件費、業務委託費なども含めた費用を“見える化”し、日本、米国、欧州、アジアオセアニアで比較して、適切な費用バランスや投資金額が分かるようにしようと計画した。
 「計画段階で最も意識したのは、事業部門がシンプルで分かりやすく投資評価できるようにすることでした。国内では様々な事業部門があり、ITの利用レベルもまちまちですし、海外、特に欧米では評価内容が論理的であることが重要になります。分かりやすく評価できるようにしないと、事業部門に対してきちんと説明ができませんし、納得して導入してもらえません。その上で、今回はフレームワークを作るだけでなく、グローバルに展開して活用してもらい、その中でフィードバックを吸い上げて改善し、継続できるようにすることを目標にしました」とオリンパス IT本部 IT戦略推進室 1グループ 課長 大和屋 博氏は語る。
 こうした構想の下、IT本部ではパートナーの選定に入り、最終的にアビームコンサルティングを選んだ。その際、最も重視したのはオリンパスと一緒になって議論し、同社のメンバーと同様に実際にプロジェクトに取り組むコンサルティング会社かどうかだった。加えて、オリンパスの主体的な取り組みが極めて重要なので、担当者の話を聞いて現場の感覚を共有できるコンサルティング会社が望ましいと考えた。「今回のような経営に近いテーマの場合、理想論で教科書のような絵を描くコンサルティング会社もあります。しかし、実際にオリンパスにその理想が合っているかとなると、また別の話です。ですから私たちと一緒になって考え、行動し、国内・海外で展開する上で生まれる様々な課題の解決に向けてパートナーとして動いてくれるところを探しました。アビームコンサルティングには、現場の話を聞きながら共に活動してくれるだろうと期待して、決めました」(石橋氏)。

 

大和屋 博 氏

今回の経験を生かして、ロボットやAIなど今後活用が必須となる技術の業務への組み込み方や留意点などについて、ユーザーフレンドリーなアドバイスを期待します

オリンパス株式会社
IT本部 IT戦略推進部
1グループ 課長
大和屋 博 氏

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プロジェクトを推進する上での課題

投資案件評価表の内容を細かく説明、現場の理解を得て、点数化

 プロジェクトは2016年6月から開始し、ITコスト分析・コスト削減施策の検討、IT投資タイプ別の投資ポートフォリオ・フレームワークの構築、グローバルIT費用管理プロセスの確立の3段階で進めた。そして、16年10月頃から国内展開、12月頃から海外に展開し、プロジェクト開始後半年ほどの期間で投資評価を出すところまで実現することができた。
 その中で最も苦労したのがIT投資ポートフォリオ評価に使う投資案件評価表の浸透だった。国内では今まで子会社や事業部門で、ITシステムを個別に導入しているケースも多かった。その場合でも、投資案件評価表にもとづいて新規案件を評価項目ごとに点数化し、基準に達しない場合は投資を見合わせた。「投資評価を行う意義や理由から始まって、評価表の内容を何度か説明して、評価項目に記入してもらうのですが、相手は初めてのことですし書き方も分かりません。そこで、数十項目の評価項目について目的をそれぞれ説明し、理解を得ていきました。その結果、事業部門で計画していた大規模投資案件を見送ったケースもあり、それについて納得してもらうのは大変でした」(石橋氏)。
 一方、海外は全投資案件ではなく、最終的に本社の役員決裁が必要になる大規模案件を対象としたこともあり、当初の予想よりも容易に理解を得ることができ、活用もスムーズに進んだ。「今までは決裁に上げる際の説明内容がまちまちで、本社から見ると案件ごとに説明ポイントやレベル感も違っていました。投資評価の観点を整理したので、プレゼンに必要なポイントが明確になり、日本の役員と各国との意思疎通を図ることができる、日本での役員決裁も分かりやすくできるようになる、と説明しました。評価表の内容のシンプルさ、分かりやすさも手伝って、全体として分かりやすいと評価され、問題なく利用が進みました」(大和屋氏)。


図 IT 投資ポートフォリオ評価フレーム構築

画像を削除しました。

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課題解決のソリューション

医療機器中心のオリンパスに最適な内容や言葉に評価項目を調整

 アビームコンサルティングはオリンパスと共にプロジェクトを推進したが、特にIT投資案件評価表の作成では、ひな形をもとにオリンパスで使われる用語を使用し、評価項目の配点の変更などの調整を行った。加えて、投資タイプを業務効率化型、競争力優位型、インフラ強化型、外部環境対応型の4つに分け、配点を変えるなども工夫した。
 オリンパスは医療機器を中心に事業を展開しており、事業継続の観点から法制度やFDA(米国食品医薬品局)規制への対応を非常に重視している。そうした外部環境への対応は一般的に評価するとROIは低くなるが、オリンパスでは厳格に対応することが求められる。そこで外部環境対応を重視する配点も加えた。「投資評価の結果にもとづいて、最終的に経営が投資の意思決定を行うので、外部環境への対応は非常に重要です。そうしたオリンパス固有の事情をもとに評価表が作られていたことが、現場での高い評価につながりました。また評価結果が数値で出るので分かりやすく、事業部門側の納得を得るのも容易でした」(石橋氏)。
 さらに、海外も含めてプロジェクト開始から半年強でプロジェクトを完了させ、評価結果を出すことができた。これはグローバルで見ても、今までにはない非常に速いスピードであり、アビームコンサルティングと協力してプロジェクトを進めたことが大きく貢献した。

Story

導入効果と今後の展望

評価表の改善と共に、競争力向上のための新規案件の発掘をめざす

 IT投資ポートフォリオの形で新規案件に対する評価を出すようになって、経営からは投資評価が非常に分かりやすくなったと高く評価されている。従来は案件単位で行っていたので、同じ基準で評価できなかった。今はグラフ化し、評価点数を出すので、各案件について投資実行や継続検討などの意思決定を、スムーズに行うことができるようになった。「国内では事業計画を立てるのと同じ段階で、次年度予算化するかどうかの投資評価を行い、合格点に達した案件だけ予算化します。このやり方に事業部門は非常に協力的ですが、投資評価を行うことで、評価表導入直後に比べて新規投資案件が減りました。事業部門もROIを出すことが難しい案件は提案を見直し、評価表が書けるような案件だけが投資評価のステップに入っていきます。その結果、適切なIT投資が行えるようになりました」(石橋氏)
 またグローバル展開、中長期計画初年の2016年度の半年強で運用を開始したスピード感、明文化してルールを確立、展開できたことが評価されて、研究開発、製造、営業マーケティング、本社などの各部門から前年度の優れた活動を表彰する、オリンパス優秀社長賞にも選ばれた。
 さらに、事業部門から出てきた改善項目や要望は集約して、評価表の評価項目の内容を修正、バージョンアップして展開してきている。そこでの改善活動を継続して、さらなる活用を図っていく。そして運用の徹底を図り、海外でも日本と同様に中規模以上の案件から各リージョンで自ら評価し、投資の判断をできるようにして行く計画だ。その上でIT戦略推進部では、インフラ強化型のITコスト削減と競争優位型のIT投資の拡大をめざして、事業部門に対して、AIやIoTの活用などを提案し積極的な案件の発掘と創出を進めていく考えだ。

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