ABeam DX Insight 第16回

DXエンジン
~データドリブン経営管理、傾向と対策~

2021年8月19日

菅田 一基

戦略ビジネスユニット
執行役員 プリンシパル

 

企業がDX対応を進める中で、経営管理についてもデジタル活用による高度化が求められてくる。DXによって事業展開でのデータ活用の可能性が拡大すると、経営管理にもデータを有効活用し、事後対応にとどまらず、環境変化の予兆把握、更には柔軟な計画修正を実現する仕組みが構想されるようになるだろう。
そうしたデータを活用した経営管理は、データドリブン経営管理と呼ばれ、多くの企業が着手し始めている。
アビームコンサルティングでは、企業の経営管理の成熟度を下図のように定義しており、レベルアップするにつれ、よりデータの高度利用が不可欠になっていくと考えている。

図 アビームコンサルティング経営管理成熟度モデル

図 アビームコンサルティング経営管理成熟度モデル

環境変化の激しい現状において、データドリブン経営管理によって、高度な経営管理を目指すことになるが、同時に、ある種の慣性が働くことで、過去の慣習が障壁となり、レベルアップの足かせとなることも多い。この点、経営を担うリーダーシップチーム(経営会議メンバーで構成され、DXに関する意思決定をする集団)がレベルアップの取り組みをけん引していくことが重要となる。
ここでは、レベル3以降で重要となるポイントを解説していく。

「レベル3:事後対応経営」ではデータに基づく客観的な対応方針の意思決定が重要となる。本来は、ドリルダウンできるようにデータが体系化されており、実績値をベースに、その原因と対策の分析を行っていくのが理想的な姿だ。
しかし、実際には、データは見るものの、結局は経験と勘によって対策を意思決定してしまう。むしろ、想定する原因・対策を正当化するための追加的なデータ分析が行われ、所期の目的が達成できないケースも多い。リーダーシップチームによるデータ活用の徹底が必要だろう。

「レベル4:事前対策経営」では、実績データに基づく原因分析に加えて、将来リスクに備えて事前に対策を講じ、改善することを目指す。従前の対策の結果をモニタリング・レビューすることで次の打ち手の精度向上につなげていく。
しかし、財務指標を中心とする実績データおよび対策結果のデータを分析するだけでは、行動につながる指標にまで自動的にブレイクダウンできず、KPIに基づいて自ら考えないと実践可能な打ち手につながらない。このレベルでは、リーダーシップチームによるコーチング型のスタイルが期待される。

「レベル5:予測・臨機応変経営」では、環境変化に対応するために、対策の方向性自体を機動的に見直すことを目指す。非財務・非構造化データなども活用し予兆を捉えることで、How(手段、方法)にとどまらず、What(何をするか)についても見直していく。
しかし、ここでも、実際にはAIなども用いたシナリオ分析にとどまるケースも多い。年間予算サイクルで企業全体が運営される中、期中などでの予算組み替えには社内的なハードルが存在するため、もう一歩踏み込んで、計画自体を適宜に見直すまでには至らないケースも多い。これついては、リーダーシップチームによる大胆な意思決定でしか、実現が難しい。

上記に見られるように、データドリブン経営の実現は、仕組み・技術の問題というより、使う側の変革意識や能力、更には社内での合意形成に依存している。この点で、データドリブン経営を推進するリーダーシップチームがデータ活用に関する意識を統一し、創意工夫を促す仕組みを整備することが重要となる。データ活用による経営管理の高度化に向けては、リーダーシップチームでの方針に関する一枚岩化に取り組むことが望まれる。

ABeam DX Insight

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