ABeam DX Insight 第14回

DXエンジン
~DXを強力に加速させるためのDX組織のミッション・役割定義~

2021年7月21日

菅田 一基

戦略ビジネスユニット
執行役員 プリンシパル

 

DX推進にあたって、専門の推進組織を立ち上げる企業は多いが、期待した成果を上げられている例は少なく、その役割・機能について再考を迫られているケースは多い。DX組織の大半は部門横断の横串し組織として組成されるが、縦軸となる事業・営業部門との関係を整理し、独自の提供価値を発揮することに苦労する例が多い。このような状況において、DX組織のミッション・役割について、各社の試行錯誤は続いている。

そこで本インサイトでは、各社のDX組織の有効性向上に向けた取り組みを、組織・チームの基本的役割である、意思決定・調整・助言・情報共有の4つのカテゴリに当てはめて整理していく。

図 DX組織のミッション・役割の整理

図 DX組織のミッション・役割の整理

意思決定
DX組織が新しい事業モデルについて意思決定の役割を担うケースがある。
既存の事業部門だけでは手掛けることが困難なデジタルを活用した新ビジネスモデル(例:請負型から成功報酬型への移行など)について、外部連携、スキーム検討を含めて企画推進する責任を負うことになる。また、スマートシティに関する事業構想など、複数事業部門を束ねて新しい事業を構築するケースでも、データ活用という切り口からDX組織が全体をリードすることがある。DX組織が事業推進機能を発揮するケースでは、デジタル知見だけでなく、収益モデル・ビジネススキーム企画のケイパビリティも必要となる。

調整
DX組織が全社課題解決に向けて、関連部門との調整機能を発揮するケースがある。
例えば、DX人材などのリソースマネジメントに関してDX組織が調整するケースがある。
希少な存在であるDX人材がDX組織内に在籍している例もあるが、実態としては特定の事業部門への固定的なアサインとなっているため、事業部門ごとに最適化された採用・育成となり、個別最適となっていることが多い。そこで、必要人材の定義から採用・育成計画の策定にわたる一連のリソースマネジメントについて、DX組織が各部門と調整することで、大きな課題となっている人材不足解消に貢献することが期待される例も存在する。

助言
DX組織が事業部門や子会社からの要請にこたえる形で専門的見地からアドバイスを提供するケースもある。
事業部門が独自にデジタル化を検討する際に、必要となるデジタル技術の知見や、場合によっては検討の進め方そのものに関するサポートを必要とする場合がある。このような場合に備え、DX組織で自社の事業展開の中で共通性の高いデジタル技術分野に関する知見を蓄積したり、検討の進め方に関する方法論を準備したりすることで各部門へ貢献していく。
例えば、各部門の保守サービスのデジタル化を見据えて、デジタル画像解析技術の知見や、デジタル化戦略検討の方法論に基づいて各部門のコンサルティングを提供するケースもある。

情報共有
DX組織がハブとなって、分散したデジタル化事例を収集し、組織全体での共有を促進する機能を果たす場合もある。
デジタル化検討の初期段階では他社の事例も含めて参考情報に対するニーズが強い。この点で、まずは先進事例を含めてユースケースの蓄積が期待される。検討が進んでくると、今度は事例の中で自部門に活かせる示唆の読み解きが重要となり、この段階でもDX組織からの情報提供が期待される。

DX組織のミッション・役割について、各社での試行錯誤は続いているが、各社固有の事情に合わせてDX組織のミッション・役割を定義することが重要だろう。上記の取り組みも参考にして、自社の状況に適したDX組織の機能を定義していただきたい。

ABeam DX Insight

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