東レ株式会社

東レ株式会社

Customer Profile

会社名 東レ株式会社
所在地 東京都中央区日本橋室町2-1-1 日本橋三井タワー
設立 1926年1月
事業内容

下記製品の製造・加工および販売
・繊維
・機能化成品
・炭素繊維複合材料
・環境・エンジニアリング
・ライフサイエンス
・その他

資本金 147,873,030,771円

※会社名、肩書き、役職等は取材時のものです。

SAP® SuccessFactors®を活用しグローバルでリアルタイムに共有できる人事情報基盤を構築

大手基礎素材メーカーの東レでは、グローバルでリアルタイムに共有できる、人材育成、タレントマネジメントのための情報基盤が必要になったことから、「SAP® SuccessFactors®」を導入した。パートナーには豊富な導入実績を持つアビームコンサルティングを選び、目標管理、人材中期計画(サクセッションプラン)と順次利用範囲を拡張してきた。T-CAS(Toray Career development Assistance System)と名付けられた新たな人事情報システムは順調に運用されており、東レではアビームコンサルティングの支援の下、情報基盤としてさらに発展させていく予定だ。

プロジェクト概要

導入前の課題

  • 人材の確保と育成
  • 人材育成関連システムの運用負担の解消と運用効率化
  • 国内外でリアルタイムに共有可能な情報基盤の必要性

ABeam Solution

  • SAP® SuccessFactors® の導入
  • 構築から保守までフルサポート
  • 人事情報をクラウド上で管理

導入後の効果

  • 新人事情報システムへの統合による運用効率化を実現
  • 国内外の人事情報のリアルタイムでの共有を実現
  • 最新システムを導入したことによる社員のエンゲージメントの向上

Story

T-CASは発展途上にあるため、アビームコンサルティングには長年のプロジェクト・保守の経験に基づいた積極的な提案をお願いします

 

常任理事 人事勤労部門(人事部)担当 
人事部長 人事開拓室長
柳井克之 氏

Story

プロジェクトの背景

人材育成のためにシステムの運用負荷解消を目指す

 1926年に設立した東レは、国内103社、海外180社を合わせた計283社が世界29の国・地域で事業を展開する基礎素材メーカーである。同社は2050年を目標に世界の課題解決に貢献する取り組み「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」を策定。その実現に向けて、長期経営ビジョン、2030年度に達成すべきサステナビリティ数値目標および2022年度までの中期経営課題と具体的な財務目標を設定している。その中期経営課題では、人材の確保・育成を重点課題の1つに掲げている。

 創業以来、「人を基本とする経営」を掲げる東レでは、一般層、管理職層、海外関係会社ナショナルスタッフの3つに分けて、様々な人材育成施策を実施してきた。一般層は管理職になるまでを専門性を高めるプロフェッショナル人材育成期間と位置づけ、個別人事に必要な情報を集約・蓄積。管理職昇格後はサクセッションプラン「人材中期計画」の制度を活用し、育成・登用を行っている。一方、海外関係会社の育成・登用でも、個別に優秀人材を選抜し登用する考え方を採用、2017年から「人材中期計画」の運用を開始した。

 「人材育成では様々なツールを活用し、従業員に関する情報を収集した上できめ細かく運用しています。しかしその都度、人事システムを改修してきた結果、使いづらいシステムになっていました。そうしたシステムに人手をかけて運用していたので、各本部も人事部も制度運用に多くの工数がかかっていました」と東レ 常任理事 人事部長 人事開拓室長(当時) 柳井克之氏は語る。

 また、人材中期計画に関しては、国内と海外とで別々の情報基盤で策定するためリアルタイムに情報共有ができていないことが課題だった。そのため、「グローバルベースで同一の情報基盤で策定したい」というニーズがあった。こうしたことを踏まえて、東レではグローバルで統一したタレントマネジメントのための人事情報基盤を構築することにした。

Story

アビームコンサルティングの選定理由

豊富なSAP® SuccessFactors®の導入実績とメンバーへの信頼感

 人事情報基盤の構築にあたり、グローバルベースでの人材の確保、育成が喫緊の課題になっている中、東レの考え方を効果的、効率的に展開することができるようにしていくことが最大のテーマだった。さらにユーザーが使いやすく、積極的に使ってもらえるような仕組みにすることが求められていた。

 そこで、東レでは2017年度下期に社内での検討を開始し、自社開発した場合も含め、RFP(提案依頼書)の各社の回答を比較検討し、製品機能、トータルコスト、セキュリティなどを評価した。その中で、東レで長年運用している「SAP ERP HCM」の開発・サポート実績、国内における「SAP® SuccessFactors®」の導入実績、プロジェクトに参画するメンバーに信頼がおけたことから、アビームコンサルティングを選定した。そして、SAP® SuccessFactors®は社員・組織情報の管理機能、目標管理・評価機能、後継者、キャリア開発機能の3つのモジュールを導入することにした。

図 キャリアシート等の統合

■ 目標管理や人材育成に関する現行機能を整理・分解し、SFsで再構築することで、各機能の目的・用途を明確にして運用改善を図る。
■ 利用機能と運用の見直しを実施し、ユーザーの利便性向上を実現。

図 キャリアシート等の統合

 「導入後も第2期、第3期と利用範囲を拡大していますが、導入時に私たちの制度の概要や考え方を深く理解いただいていました。様々な要望に対しても試行錯誤の上、解決方法を提示してもらったことから、現在までアビームコンサルティングをパートナーとして選んでいます」(柳井氏)

Story

プロジェクトの目標と推進する上での課題、解決策

アジャイル開発で試行錯誤を重ねながら、プロジェクトを計画通り完遂

 プロジェクトがスタートしたのは2018年5月。従来東レでは、人事システムは人事部門がシステム部門に詳細な設計図を渡して、スクラッチで開発を行ってきたが、今回のプロジェクトではパッケージソフトをアジャイルで開発するという進め方を採用した。その結果、パッケージソフトの仕様や、実際に実現できることに関して事前の理解が不十分な中、アジャイル開発特有の難しさと向き合うことになった。

 プロジェクトが進むうちに実現できる機能に認識の齟齬があったり、いざ試してみると動かなかったりするという場面に何度も遭遇した。またアジャイル開発は、クラウドサービス導入においてグローバルには主流となりつつある開発手法ではあるものの、日本では馴染みが薄く、東レでも経験がなかった。そのため、コストや開発期間を極小化できた一方、実際に開発を進めてみないと課題点が見えにくく、スケジュール通り進めるには時に集中的な人材の投入が必要だった。

 加えて、開発メンバーがアジャイル開発に慣れていないとマネジメントが難しいという面もあった。要件設定にあたっては、「短期間で開発する」「あれこれと手を出しすぎない」「フラットな発言環境」というポリシーが必要であり、プロジェクトメンバーへの権限委譲や一定の割り切り、そのことに対する上位者および経営陣の理解が必須である。「不慣れな東レのメンバーに対し、アビームコンサルティングは粘り強く話を聞いてくれて、様々なトライをしてもらうことができたと考えています」(柳井氏)

Story

導入効果と今後の展望

制度の統廃合を進め、基幹人材の育成に関する考え方の再構築を図る

 2019年9月、T-CASと名付けられた人事情報システムが完成し、目標管理、人材中期計画の順に、運用を開始した。運用開始後、社員から「使いやすい」「シンプル」「やっと最先端のツールが導入された」「管理が楽」という意見がある一方、年配の社員からは、「使いにくい」「エクセルのほうがよかった」という声もあったという。導入当初は初歩的な質問も含め1日100件を超す問い合わせが1カ月以上、人事部とシステム部門に寄せられた。

 また、運用開始後のトラブル対応や安定運用の実現にも試行錯誤が必要だった。リリース直後には開発中に想定していなかったトラブルが発生することがあり、ミニマムな改善を繰り返しながら、より良いシステムを作り上げていった。「アビームコンサルティングは運用開始後の保守対応も担当しており、東レだけでは解決策が見いだせないトラブルに対するアドバイスや解決に必要な作業を担ってもらい、大変助かりました」(柳井氏)。

 T-CASの導入は、東レの人事情報システムにおいて大きな転換点であり、2つの点で評価することができる。1つは人事情報というセンシティブなデータをクラウド上で管理するという前例を作ることができたこと。従来、情報セキュリティの観点から保守的な判断をしてきた面もあったが、クラウドで管理するようになったことは情報セキュリティの観点からも大きな前進であり、他本部・部門での導入も進むと考えている。

 もう1つは先進的なシステムを導入し、先行企業に並ぶことができたことだ。T-CAS導入に関して、若手社員から比較的高い評価を得ることが多い。職場のIT環境は、デジタルネイティブ世代である若手社員のモチベーションの源泉になるポイントであり、目標管理などをエクセルと紙で運用する状況から脱却できたのは、エンゲージメント向上の観点からも大きな意義があった。

 現在、東レでは基幹人材の育成に関する基本的考え方を再構築するために、重複した制度の統廃合や各制度の趣旨の徹底に取り組んでいる。その実現のための人事情報基盤としてT-CASを最大限活用することで、スピーディーに対応することができる。

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