株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン

株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン

Customer Profile

会社名
株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン
所在地
東京都港区虎ノ門3-4-8
創業
2000年5月
資本金
8億2400万円(2011年7月31日現在)
事業内容
リテールビジネス、ゴルフ場ビジネス、メディアビジネス
連結売上高
131億6500万円(2010年12月期)

※会社名、肩書き、役職等は取材時のものです。

SAP ERPからフロントのWebシステムまで全システムのインフラをフルクラウド化。
SAP ERPはMicrosoft Azureへ移行、処理のスピードアップと業務の効率化を実現

ゴルフ用品ECサイトとゴルフ場予約サービスを中心に事業を展開するゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)は、基幹システムのSAP ERPからフロントのWebシステムまで全システムのインフラのフルクラウド化を決定。SAP移行のパートナーにはアビームコンサルティングを選び、Microsoft Azureにシステムを移した。本番移行は定期メンテナンスと同じ8時間でサービスを再開させることができ、EC、予約業務へ影響を与えずに切り替えることができた。

プロジェクト概要

課題

  • ハードウエアの保守期限に間に合わせたインフラの更新
  • 業務拡張に対応した柔軟で拡張性が容易なインフラの整備

ソリューション

  • ABeam Cloudを生かしたSAPのクラウドへの移行ノウハウ
  • AWSとMicrosoft Azureのハイブリッド
  • 小売業のノウハウで業務へのリスクを抑える

成功のポイント

  • 処理のスピードアップと業務効率化の実現
  • SAP ERPのより安定的な稼働の実現
  • ハードウエア保守期限がなくなり更改業務の負荷を解消

Story

渡邉 信之氏

SAP ERPも2024年に終了、SAPHanaに移ることが決まっています。基幹システムをどうするか、今回の移行も含めて、SAPに深い知見を持っているアビームと一緒に考えていきたいと思います

株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン
経営戦略本部 本部長 CTO
渡邉 信之氏

Story

プロジェクトの背景

SAPのハードウエア保守期限切れが迫り、リプレイスを検討

株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン(以下、GDO)は2000年に設立された、ゴルフに特化して多くのコンテンツやサービスを提供する企業だ。「ゴルフで世界をつなぐ」をミッションに据え、ゴルフ用品販売などのリテールビジネス、ゴルフ場予約などのゴルフ場ビジネス、コンテンツ・広告などのメディアビジネスの3つを軸に事業を展開。ゴルフ総合ポータルからゴルフライフのサポートへと進化を図り、あらゆるゴルファーの満足度の最大化を追求している。
とりわけGDOが今、力を入れているのが既存サービスの徹底強化と新規サービス展開、海外事業展開の3つだ。既存サービスの強化では、継続して取り組んできたスマートフォン向けサービスのいっそうの拡充、GDOゴルフショップでの新規取り扱いブランドの拡大、ゴルフ場予約、予約枠の充実、レッスンサービスの出店加速などに取り組んでいる。また新規サービスでは、ジュニア向けゴルフスクール運営会社の子会社化、星野リゾート「界」との協業、JTBとの連携をスタートさせた。さらに海外事業では、米国GolfTEC社と資本業務提携すると共に、タイにおけるゴルフ場向けソフトウエア事業を開始予定だ。
「ゴルフ市場全体は縮小していますが、予約ビジネスでも、用品販売でもGDOのシェアはまだ小さいのです。そうした中で、GDOはEC化率伸長の波に乗り、サイト来訪者も右肩上がりで増え、シェアも拡大し続けています。このトレンドを逃すことなくつかみ続けると共に、4つ目、5つ目の新たな事業を作り出していきます」とゴルフダイジェスト・オンライン 経営戦略本部 本部長 CTO 渡邉 信之 氏は語る。
競合が増え、いっそう競争が激しくなる中で、よりよいサービスを迅速に提供し、顧客満足度を向上させるにはサービスを支えるITインフラが極めて大きな役割を果たす。そうした中で、基幹業務システムとして運用してきたSAP ERPのハードウエアの保守期限が2017年秋に迫り、GDOはリプレイスの検討を開始した。

Story

アビームの選定理由

フルクラウド化を決断。業務への影響まで考えて取り組むアビームコンサルティングを選定

リプレイスにあたって、GDOでは最初に、オンプレミスのままで行くのか、クラウドにするかを検討した。その結果、オンプレミスでは6 ~ 7年後にリプレイス作業が発生することや、急スピードで拡大しているクラウドの様々なサービスを利用できないリスクがあると判断、パブリッククラウドを採用することにした。「クラウド化にあたっては、移行の難易度ではなく、クラウド化というIT全体の大きな流れの中で、システムのあるべき姿を考える必要があると判断しました。そこで、SAPだけでなく、ECサイトやゴルフ場予約などフロントのWebシステムまで含めて、すべてのシステムをクラウドに移すことにしました」とゴルフダイジェスト・オンライン 経営戦略本部 インフラマネジメント室 室長 白尾 良 氏は語る。
その上で、GDOはSAPとデータベースの要件定義や設計、構築/テストを行う移行パートナーとして、アビームコンサルティングを選んだ。またジョブ管理や監視などの周辺システム、SAPとWebシステムのクラウドプラットフォーム構築担当ベンダーは、今までGDOのシステムを構築・運用サポートしてきたパナソニック インフォメーションシステムズ(以下、パナソニックIS)に決めた。「アビームコンサルティングには、以前からSAPの運用保守をお願いしてきています。業務面でのリスクを考えながら保守業務を担っていただいているので、アビームコンサルティングであれば、その蓄積を生かして業務への影響を考慮しながら、プロジェクトを進めてくれると考えました。他のベンダーにも問い合わせましたが、『SAPの移行はできるが、業務面での影響を判断するのは難しい』という回答だったので、アビームコンサルティングに決めました」とゴルフダイジェスト・オンライン 経営戦略本部 ビジネスデザイン室 八巻竜太 氏は説明する。
「アビームコンサルティングは、コンサルティング会社でありながら、小売りのノウハウも持っていて、社員の層が厚いと感じています。SAPの運用保守を担当してもらって7年ほどになりますが、社員が替わっても、クオリティは一定以上のものを維持しています。開発や保守といった分野では、スタッフが入れ替わるとクオリティが下がりがちですが、アビームコンサルティングにはそうした通例は当てはまりません。それも、アビームコンサルティングに決めた大きな理由のひとつです」(渡邉氏)

Story

プロジェクトを推進する上での課題

SAPのAzureへの移行、最大の課題は本番システムへの8時間での切り替え

GDOでは当初、フロントシステムからSAPまで全システムをアマゾン・ウェブ・サービス(以下、AWS)上に移行しようと計画した。しかし、AWSはSAPで利用しているMicrosoft SQL Serverのライセンス料が不明確だったことから、Microsoft Azureであれば問題がないと考え、SAPはAzureに移行することにした。
「当初、AWSに移すことにしているのに、なぜAzureと分けて複雑化させるのか、疑問に思いました。しかし、議論していく中で、これからは、AWSに一本化するのではなく、適材適所でクラウドを利用していくというポリシーを持たなくてはいけないと考えるようになりました。今回はAWSとAzureですが、よりよいプラットフォームが出てくればそこに移るというように、プラットフォームの選択も柔軟にしていく考えです」(渡邉氏)
SAPの移行プロジェクトがスタートしたのは2016年6月、ハードウエアの保守期限は2017年秋だったが、ゴルフ場の閑散期である2017年2月にクラウドへの移行を行うことにした。そこで一番大きな課題になったのが、本番システムへの移行にかける時間だ。GDOでは今回、アビームコンサルティングに8時間以内での移行を依頼した。システム移行にあたって、ベンダーはリスクを考えて、通常48時間確保するが、GDOはEコマースとインターネットでのゴルフ場予約を行っており、48時間もシステムを止めることはできない。そこで、半年に1回定期メンテナンスでシステムを停止させているので、その範囲内で移行を行うようにアビームコンサルティングに要請した。「8時間といっても、通常は午前0時に止めることが多いのですが、ゴルフ場は開くのが朝の5時か6時なので、エンドユーザーやゴルフ場に迷惑をかけないように、今まで実施したことがない22時にシステムを停止し、翌朝6時には本番システムを稼働させることにしたのです」(白尾氏)

図1. システム構成設計

Story

課題解決のソリューション

Azure上に高性能の中間機でコピー環境を作成、バージョンアップ時間を短縮

プロジェクトでは、パナソニックISも含めて進捗状況を検討する定例会議を最初は隔週、途中から毎週開催し、持ち帰り事項を作らずに会議の場で確認、アビームコンサルティングはABeam Cloudのノウハウも活用しながら、設計と構築、テストに取り組んでいった。アビームコンサルティングとパナソニックISとの連携もうまくいき、計画通りプロジェクトを進めることができた。特に後半のシステムテストと移行リハーサルでは、AWSに移行するフロントシステムが多く存在したため、アビームコンサルティングがあらかじめシステムごとに課題を洗い出し、GDOが社内調整を含めて準備しておくべき点を整理する形で進めていった。
その上で、新しいシステムではSAPのアップグレードだけでなく、データベースもSQL Server2008からSQL Server2014へのバージョンアップも必要だった。そのため、バージョンアップとデータ移行の両方を行わなければならず、そのままでは8時間で終了できないため、クラウドの特性をフルに生かして、バージョンアップ時間を短縮し、本番への移行時間を減らす手法を考えた。
具体的には、移行前のオンプレミスと移行先のAzure環境の間のAzure上に中間機を置いて、そこにコピー環境を作った。そして、新しい環境になじませるようにSAPのアップグレードモジュールをあてていく。アップグレードモジュールの適用はデータベースやサーバーの性能が直接に影響するため、パナソニックISに依頼して、高い性能を持った中間機を用意してもらい、アップグレードモジュールを適用した上で、最終的に通常の運用に使うサーバーにコンバートした。「定例会議の場で、色々なアイデアを出して試行錯誤しながら、プロジェクトを進めていきました。高性能の中間機を用意するというのもその中で出てきた解決策でした」(白尾氏)
それ以外のシステムは、バージョンアップモジュールの影響範囲を特定し、可能な限りバージョンアップの裏でデータの同期を短時間で行い、最終的な移行当日のデータ量をできる限り減らしていった。
その結果、SAPの移行は12時間かかったが、ECサイトや予約システムの移行は計画通り8時間で終了し、業務を再開。その裏でSAPが移行し続けていたものの、GDOの顧客から見ると、システムが停止していた時間は8時間だった。

Story

導入効果と今後の展望

インフラコスト固定のまま、新しいサービスの提供が可能な環境をめざす

2017年2月、Azure上のSAP ERPは予定通り稼働を開始、現在まで順調に運用されている。その中で特にアプリケーションはオンプレミスの時よりも安定して動作しており、原因がはっきりしないサーバーの再起動もなくなった。「クラウドに移行して、サーバーの性能を上げているので、処理が速くできるようになったものもあります。アプリケーションとインフラの切り分けが容易になり、インフラはすべてパナソニックISがサポートしてくれるので、人的なリソース面での負荷が少なくなって、大変助かっています」(八巻氏)。GDOでは元々、クラウド移行によるコスト削減という考え方は持っておらず、今回、業務のスピードアップと効率化が進んだことが最大の成果だと評価している。
その上で、GDOでは、今後、様々なクラウドサービスを組み合わせてカスタマイズしながら、事業に貢献できるプラットフォームを作り上げていきたいと考えている。サービスの拡張や新しいサービスを提供しても、インフラコストは固定したままで、なおかつ安定して運用される状態を目指して、プラットフォームを強化していく計画だ。

図2. サービス停止期間

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